この手につかみたいもの
39.5
「やっ! やだ!」
アスランと体を重ねるようになって、久々にキラは本気であらがっている。それがアスランにはおもしろくなかった。
「初めてだね、こんなに抵抗されるのって」
それはそれで楽しいけど……とアスランは低く笑う。そのまま、キラの弱みの一つである胸の飾りに噛みついた。
「やぁっ!」
びくんっとキラの体が過剰なまでに跳ね上がる。おそらく、快感よりも痛みの方を強く感じているのだろう。細い眉が寄せられている。
「駄目だよ、キラ……そんな表情をしたら眉間にしわが出来てしまうだろう?」
そうさせているのは自分だとわかっているが、アスランはそれでもことさら優しい口調でこう声をかけた。
「……ア、スラン……」
いったい何を、とキラの口調が問いかけてくる。
「いい子だね、キラ……だからおとなしくして」
痛い思いはしたくないだろう? 続けて囁いた言葉に、キラの体が硬直した。どうやら、最初の時の痛みを思い出しているのだろう。
「いつものようにいい子にしていたら、ちゃんと気持ちよくしてあげる。ね?」
そうしたら、ゆっくりと眠れるだろうと、アスランは付け加える。
「……で、も……」
「話はそれからでも出来るだろう? それにね、僕だって嫉妬心がないわけじゃないんだよ?」
この一言にキラは目を大きく見開く。
「あの男なんだろう? キラにこういう事を教えたのは」
くすりっと笑いながらアスランはキラの服の裾から手を差し入れる。そして、直接その肌に刺激を加えてきた。
「……アスラン……」
「まぁ、感謝しているけどね。キラのお初を残していてくれたんだから」
くすくすと笑い声を漏らしながら、アスランはあらわになったキラの肌に口づけを落としていく。
「んっ!」
キラが小さく息を飲む。同時に、それまでこわばっていた彼の体から力が抜けていった。さらにした先で弱みをくすぐってやれば、肌が熱を帯びてくる。
その事実に満足感を覚えながら、アスランは既にその存在を主張し始めている乳首へと舌を絡めた。反対側は指でつまんでやる。
「あぁっ!」
キラの口から嬌声とも取れる声が飛び出す。
「ようやく素直になってきたね」
さらに刺激を強めながら、アスランは囁く。それが恥ずかしいのか、キラは嫌々するように首を横に振っていた。
「どうしていやがるの? いつものことだろう?」
可愛いよ、といいながらアスランはきつくそれを吸い上げる。
「ひぁっ!」
キラの腰が大きく揺れた。それだけではない。布の下では彼の欲望が息苦しさを覚えているようだ。
「こっちも堅くなってきたし」
触って欲しい? と口にしながらアスランはキラの顔を覗き込む。
菫色の瞳は固く閉じられている。その目尻には涙がにじんでいた。それでも、彼の目元はうっすらと染まり、開かれた唇からは甘い吐息がこぼれ落ちている。
「教えてくれないとわからないよ?」
そんなキラの目元にキスを落としながら、アスランはキラの中心を膝で刺激した。
「ふぁぁぁっ!」
びくびくっとキラの体が震える。同時に、アスランの腕を掴んでいた彼の指に力がこもる。
「痛いよ、キラ」
それすらも気持ちいいというように目を細めながら、アスランはキラの耳たぶに歯をたてた。
「……やっ……もっ……」
キラが耐えきれないと言うように言葉をつづる。
「……して……」
涙がにじんだ声で囁かれて、アスランは満面の笑みを浮かべた。
「いいよ。して上げる……でも、僕以外にさせちゃ駄目だよ?」
あの男には絶対、と囁きながら、アスランはキラの前を解放してやる。そしてそのまま体をずらすと形を変えたものに舌を絡めた。
「アァァァァァッ、んっ、んっ……」
キラの唇から次々と甘い声が飛び出す。それはアスランの体を煽るのに十分なものだった。
キラのそれにさらに刺激を加えつつ、アスランはその奧へと指を移動させていく。そして、次の刺激を待ちかねるように収縮を繰り返している場所をそっと指の腹で撫でた。
「ふぁっ!」
アスランの髪にキラの指が絡みついてくる。その感触に目を細めながら指をそこに侵入させれば、髪が引っ張られた。
「痛いよ、キラ」
そう言いながら、アスランはお返しというようにキラのそれを軽く咬む。
「だ、だめぇっ!」
いっちゃう、とキラが叫ぶ。
「いいよ、いっても……」
時間はまだあるからね、と付け加えながら、アスランはキラの内に侵入させている指の数を増やす。そして、そのまま奧をえぐる。
「やぁぁぁぁぁ!」
悲鳴とともに、キラはアスランの口の中に欲望を解放してしまった……