愛しき花

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 久々にカナードが戻ってきた。しかし、彼の表情は堅い。
「何かありましたか?」
 カガリはそう問いかける。
「ギナ様からの伝言だ」
 ため息とともに彼は口を開く。
「三日ほど部屋から出るな、だそうだ」
 カガリだけではなくラクスも、と彼は続ける。
「……いろいろと聞きたいことはあるけど、それ以前に、どうやって連絡をしてきたんですか、あの人は」
 カガリはそう呟く。
「それは、あの人だからな」
 微妙に言葉を濁される。と言うことはムウ経由で届いた、と言うことか。だから、最近、カナードが彼の機体にかかりきりになっていたのだろう。
「助っ人も連れてくると言っていたが」
 いやな予感がするのは錯覚か? と彼は呟く。
「奇遇だ。私も、そう思う」
「わたくしもですわ」
 カガリだけではなくラクスもそう言って頷く。
「近くにクルーゼ隊長がおられるなら、なおさらです」
 ラウがいるなら、と言う一言にカガリは引っかかる。
「何でだ?」
 ラウと知り合いだったのだろうか。そう思いながらカガリはラクスに問いかけた。
「わたくしの婚約者がいるからですわ」
 そうすれば、彼女はため息混じりにこう言い返してくる。
「なるほど。相手はお前の本性を知らないんだな」
 納得、とカガリは頷く。
「そう言うわけではありませんわ」
 ただ、とラクスはため息をついた。
「問題なのは周囲の方々です。きっと、カガリも同じ目に遭いますわ」
 この言葉にカガリは首をかしげる。
「別に、今更だろう」
 セイランのあれこれに比べたらかわいいものではないか。
「邪魔しようというわけじゃないなら妥協できるだろうし」
 苦笑とともにそう言い返す。
「こればかりは実際に体験してみないとわかりませんわね」
 ラクスは意味ありげな笑みとともにそう言った。
「そのときにどのような感想を抱かれるか、楽しみですわ」
 彼女のその表情にいやなものを覚える。だからと言って、自分の言葉を撤回する気にもなれない。
「実力行使に出られなければ、どうでもいい」
 何度監禁されそうになったのか、とカガリはぼやく。
「ほぉ」
 その瞬間、カナードが低い声で言葉を綴り出す。
「俺はそんなことは聞いていないな」
 そういえば、彼には内緒にしていたのだった。今更ながらに、その事実を思い出す。
「ミナ様は知っているぞ」
 こうなれば、責任は彼女に転嫁しておくしかない。そう判断をしてカガリは口を開く。
「それに……あの後すぐ、おじさま達のことがあったからな」
 これで時期についてはわかるだろう。
「あの頃か」
 カナードがいやそうに顔をしかめる。
「だから、私から言うタイミングがなかったんだよ」
 あのときはキラの方が優先順位が高かったから。カガリがそう言った。
「アスランですらプラントからくると言って大騒ぎだったしな」
 それに比べれば、自分の監禁未遂はどうと言うことはない。自力で逃げ出すことができたし、あの後からキサカがそばに付いてくれるようになった。
「……どちらにしろ、近いうちにセイランはつぶすしかないな」
 とりあえず、カナードの意識を自分からセイランに向けられたからよしとしよう。カガリはそんなことを考えていた。

 もちろん、そう世の中は甘くないというのも事実ではあったが。

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最遊釈厄伝