愛しき花

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 ブリーフィングルームにアスラン達だけではなくシンの姿もある。
 それはどうしてなのか。
 何か理由があるのだろうが。そう思いながら、アスランはラウを見つめる。
「敵の新造艦の居場所が確認できた」
 アスランの視線に気づいてはいるはずだが、そんなことはおくびにも出さずにラウは言葉を口にする。
「当面は相手に気取られないように追尾する」
 この言葉に驚きを隠せなかったのはアスランだけではないらしい。
「何故ですか?」
 即座にイザークが問いかけた。返答次第では一人で飛び出していきそうな空気を身にまとっている。
「落ち着けって」
 そんな彼をディアッカがなだめるという、ある意味珍しい光景が目の前で繰り広げられた。
「理由は簡単。あの艦にはラクス嬢だけではなくカガリ・ユラ・アスハ嬢もとらえられているからだ」
 自分達だけの問題ではなくなっている、とラウは続ける。
「サハクも動いている。こちら単独で動くよりも共同で事に当たった方がいいと判断した」
 彼の言葉に他の者達は納得する。
「……後が怖いだけ?」
 だが、シンだけはキラから何かを聞かされていたのか。こんな感想を呟いている。
「確かに。アスラン達に気づかれずに接近できる方ですから。下手に怒りを買ったらどうなるかわかりませんね」
 ニコルも小声で同意の言葉を口にした。
 それはラウの耳にも届いているはずだ。だが、それを無視して彼は口を開く。
「他にも、オーブの民間人が艦内にいる。うかつなことはできないだろう」
 焦る気持ちはわかるが、と言われればイザークとしても引き下がらざるを得ないのだろう。唇をかんだままだ。
「少しでも損害を減らすためには入念に準備をするものだよ」
 それは誰に向けられた言葉なのか。
「ともかく、そういうことだからね。君たちは準備を万全にしておくように」
 この言葉に、アスラン達は頷く。
「シン・アスカ」
 ラウは不意に彼の名を呼ぶ。
「はい」
「キラのパソコンをネットワークにつなぐように。ただ、システムに手を出さないように気を付けてくれ」
「それはかまいませんが……」
 でも大丈夫かな、と彼は呟く。それはきっと、キラの趣味を彼らも知っているからだ。
「ギナ様からの連絡は彼女に入りそうだからね。仕方がない」
 ため息とともにラウはそう言う。
「……それともう一つ、かまいませんか?」
「何かな?」
 シンの問いかけに即座にラウが聞き返す。
「カガリさんのことはどこまでキラに話していいんですか?」
 地球軍の船を拿捕すれば、最終的にばれると思うが。シンはそう続ける。
「話す必要はない。そのあたりのことは口裏を合わせてからのことだ」
 カガリにしても、自分が無理をしたときらに知られたくないはずだ。
「わかりました」
 理不尽だとわかっていても従わなければいけない。そのことはシンもわかっていたのだろう。すぐに引き下がる。
「事前の連絡では、三日以内に作戦が始まる予定だ。覚悟しておくように」
 ラウはそう締めくくった。
 時間を区切られたからだろうか。イザークの表情からも先ほどまでの焦りが消えている。
 後は、自分達が作戦を成功させるだけだ。
「次の作戦には、私も出撃する。そのつもりで」
 どうして、彼は最後の最後にさらりととんでもない発言をしてくれるのか。
「隊長」
 ミゲルが抗議するようにそう告げる。
「失敗できないのだ。当然だろう?」
 本当にそれだけだろうか。そう考えても確かめる術がないアスランだった。

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最遊釈厄伝