トリカエバヤ

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  51  



 デュランダル邸へとキラ達が足を運ぶのは三日後と決まった。その日であればラウも一日休みの予定だから都合がいいと言っていたのだ。
 しかし、当日になったら余計な存在がうろちょろしていた。
「……うざい」
 カナードは思わずそうつぶやく。
「何でいる、の?」
 そんなカナードにすがりつくようにしながらキラが口にする。
「わからん。早々にレイと合流してラウの所に逃げ込むしかないな」
 後のことはギルバートに任せてしまえばいい。カナードはそう言い返す。
「……大丈夫?」
「あいつはそれなりに偉いそうだ。だから心配はいらない」
 カナードの言葉にキラは安心したように微笑む。
「ここにいたね」
 そのとき不意に声がかけられた。
「迎えに来たよ」
 そう言って微笑んでいたのはキラが『会いたい』と言っていた人物だ。
「ラウさん!」
「どうしてここに?」
「家に帰る途中でね。ちょうどいいから回り道をして君たちを拾っていこうと思ったんだよ」
 カナードたちの疑問にラウはこう言い返す。
「レイだと万が一の時の抑止力にならない可能性があるからね」
 さらに彼は苦笑を浮かべつつこう言う。
「本当に……どこにでも研究バカという存在はいるが、あれらと同レベルに墜ちなくてもいいと思うんだがね」
 そのあたりを理解できないとは、本当に脳みそが存在しているのかな? とラウは続ける。
「ラウさん……」
 疲れていないか、とキラが問いかけていた。
「久々に君たちの顔を見たら元気が出たよ」
 それにラウは満面の笑みを浮かべつつこう答える。
「さて、行こうか」
 こちらに近づいてこようとする者達を無視してラウがこう言う。
「レイが待ってるよ」
「うん」
 そういうとキラがラウと歩き出す。カナードは二人の後をついていく。
 周囲でこちらを見張っていた連中はラウの登場に驚いたらしい。動いていい物かどうか判断できないようだ。
 そのまま離れて行ってくれればいいのに、とカナードは胸の中だけでつぶやく。
「カナード?」
 ラウが不審そうに問いかけてくる。
「何でもないです」
 即座にカナードはそう言い返す。
「ただ、クラスメートらしき人物がいたような気がしたので」
「そうか」
 後で確かめておくか、とラウは言う。
「そうですね」
 裏はないとは思うが、周囲の大人はそうだとは言い切れない。キラを守るためには注意をしてもしすぎることはないだろう。
 そう考えながらカナードはラウとともにエレカに乗り込む。
「……あの人……」
 発進した瞬間、キラが小さなつぶやきを漏らす。
「どうした?」
「……この前、あった。ギナ様といっしょに」
 そうつぶやくように告げたキラにカナードはうなずく。
「ギナ様にくってかかったお子様か」
「うん」
「何を考えているんだろうな、あいつは」
 しつこいな、とカナードはつぶやく。
「キラが気になるというわけでもないだろうに」
「それ、やだ……」
「だよな」
 キラの髪をなでながらカナードは言う。
「お子様だからね」
 ラウがばっさりと切り捨てる。その見事さにカナードは拍手を送りたくなった。

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最遊釈厄伝