トリカエバヤ

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 ギナ達が帰ってきたところでカナードはキラの希望とレイからの返答について告げた。
「あれらのところであれば心配はいらぬだろうが……」
 ギナが難しい表情でこう漏らす。
「我らが送っていけば良いだけのことよ」
「確かにな。ついでに迎えに行けば良かろう」
 ミナもそう言ってくる。
「何よりもあれがおるのであれば、状況次第で動こう」
 キラに危害は加えられないだろう、と彼女が笑う。
「そうでした。あれがおりました」
 ならば絶対にキラは大丈夫だろうとギナもうなずく。
「では行かせてもいいのですね?」
「家で鬱々としているよりは良かろう」
 気分転換をしていれば体調も良くなるだろうという意見にはカナードも賛成だ。
「では、連絡が来たら予定を合わせますね」
 だから、と思いながらカナードはそう言う。
「あぁ」
「任せよう」
 二人の言葉を聞いてカナードは立ち上がる。
 本音を言えば彼らではなくカズキに声をかけたかった。しかし、彼は今忙しい。だから二人に相談したのだが。
 キラの周辺に良からぬ考えを持つ人間がいなければ、あの子どもは昔みたいに笑っていたのではないか。そんなことも考える。
「なぜ、あいつを静かに見守れないのか」
 特にプラントの連中は、とため息をつきたくなった。
「……第三世代が生まれにくくなっておると聞いたからの。そのせいであろうよ」
 新しい遺伝子がほしい。それも優秀とわかっている者を。キラはその条件に当てはまる、とギナが苦笑をうかべながらつげた。
「我らにも婚約話を持ってくるほどだからな」
 ミナの言葉にカナードは開いた口がふさがらない。
「何を考えているんですか、そいつは」
 よりにもよってこの二人に婚約話を持ってくるとは、とカナードはつぶやいてしまう。
 この二人の関心のほとんどはオーブの民へと向けられている。そして、残りのほとんどがキラへと向けられているのだ。
 それを打ち壊すことなど不可能に近いだろう。
「全くだ。我らが婚姻を結ぶとすれば、それこそオーブに万が一のことがありそれをすくうための手段が他になかった時よ」
 きっぱりと言い切るミナにギナもうなずいている。
「そもそもサハクはそのときに一番ふさわしい人物を一族に迎え当主とするのだぞ。婚姻という面倒なものを結ぶ必要などない」
 そう言うミナに関心すべきなのか、それとも呆れればいいのかカナードは悩む。
「それがサハクですからね」
 オーブ建国時からそうだった、と無難な答えを返しておく。
「結婚したとしても、相手を気遣えるとは限らないからの。一人で放置することになる」
 それでは相手に申し訳ないだろう、とミナが言う。
「だから、我らは結婚する予定はないというておるのに、聞く耳を持たん」
 しつこくも見合いを勧めてくる。それだけプラントの次世代問題は深刻なのだろう。ミナの言葉にギナもうなずいている。
「だから、お前も気をつけろよ」
「はい。最低でも父に相談します」
 宛にならないような気はするが、と心の中だけで付け加えた。
「それがいい。あいつはお前らがいるから断れているようなものだしな」
「……本当ですか?」
 知らなかったと思いつつカナードが聞き返す。
「あいつはあれでもそれなりに優秀だからの」
「それは知っていましたが……」
 あの生活能力皆無の人間に嫁の来手があるのか、とカナードはつぶやいてしまう。確かに見目は多少いいかもしれないが、と付け加えた。
「あれもあちらを振り回して遊んでおるのだ。お前も見て見ぬ振りをしてやれ」
 ギナがそう言って笑う。
「お前はキラのことだけを気にしておれば良い」
 ミナの言葉にうなずくとカナードはその場を後にした。

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最遊釈厄伝