トリカエバヤ

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「キラよ」
 窓の外を眺めていればギナが声をかけてくる。
「出かけてみぬか?」
 その言葉の真意がつかめずにキラは首をかしげた。
「外は……怖いです」
 とりあえずこれだけは主張しておく。
「我と一緒であれば大丈夫だと思うがの……」  ギナがそう言ってため息をついた。
「安心せよ。人の多いところは我も苦手だ」
 だからあまり人がいないところへ行く、とギナが続ける。
 それならば大丈夫だろうか、とキラは心の中でつぶやいた。特に皆と一緒に出かけたときのような人がいなければ、と付け加える。
「……邪魔、入りません?」
 だからというわけではないがキラはギナにこう問いかけた。
「邪魔?」
「お仕事、の人……?」
「あぁ……そう言えばあったというておったの」
 ミナから聞いていたのだろう。ギナは小さくうなずく。
「しかし、そちらが問題であったか……」
 人がダメなのではないのか、とギナがつぶやいた。
「まぁ、よい。そちらの方は姉上に任せてあるからの。我の方には来るまい……多分だが」
 最後の一言でキラの不安は倍増する。
「来る、の……ですか?」
 外に出たくない、とキラはつぶやく。そうすれば怖い人には会わずにすむから、と続けた。
「その日は姉上との会談があるから来ぬと思うぞ。それに……いつまでも引きこもっておるわけには行くまい」
 そうだとキラだってわかっている。
「……でも……」
 なんと言えばわかってもらえるのだろう。キラは悩んでしまう。
「なにかを……してもらって、当然、と言う、人は……怖いです」
 とりあえずこう言ってみた。
「なるほど……では、そういう人間が来ぬ場所へ行こう。それならば良かろう?」
 この言葉にキラは小さくうなずく。
「では、明日出かけよう。良いな?」
「……はい」
 ギナに押し切られるようにキラは明日の約束をした。

 キラが眠ったのを確認してギナはリビングへと足を向ける。
「姉上」
 そのままそこに座っていたミナに呼びかけた。
「どうした?」
「先日、あったと言っていた評議会の人間、どのような奴だ?」
 その言葉にミナがかすかに眉根を寄せる。
「いきなり何を言い出す」
「キラが怖がっていてな」
 怪訝そうな彼女にギナはそう言い返す。
「キラが?」
「外出したがらんのはそのせいよ」
 そういえばミナが納得したというようにうなずく。
「しかし、アマルフィ殿は穏やかな方だが……」
「表面上は、であろう? 評議会議員である以上、ある程度裏があると考えて良かろう。それを感じ取ったのだろうが……」
「ふむ……キラに感応系の能力はなかったはずだが」
「あるいはあれの後遺症のひとつなのかもしれん」
 その言葉にミナが表情を変える。
「すぐに調べさせよう」
 それが本当だった場合、よからぬものに利用されかねない。それを懸念してのことだろう。
「ウズミに話をすればすぐに動いてくれるはずだ」
 彼女の言葉にギナもうなずいて見せた。

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最遊釈厄伝