トリカエバヤ
40
今はまだ、建造中のコロニーの存在を明かすわけにはいかない。
それよりは黄道同盟の基地を使用した方がましだ。
最高評議会が出した結論はそれだった。
「申し訳ないが、オーブのシャトルにその旨を通達していただきたい」
「それはかまわぬが……黄道同盟の宇宙港では条約に反するのではないか?」
オーブは中立。何があろうと軍とは関わらない。そう約束をしたはずだが、とミナが問いかける。
「それに関しては心配はいりません。黄道同盟の基地とは言っても、まだ整備中で運用はされていない場所ですから」
ルイーズはそう言い返す。
「なるほど……例の計画に関わるコロニー群の一角か」
それだけでわかるものか、とルイーズは驚く。
「まぁ、良かろう。あちらには今回の事故で使えなくなった宇宙港の代わりに完成したばかりのものを使うと言っていこう」
それがどこのことを言っているのか、確認しなくてもわかる。
「申し訳ありません」
確かにそれであれば今しばらく地球連合をごまかせるだろう。もっとも、いずれはバレルだろうが、それまでに準備を終わらせてしまえばいい。
「……それにしても、なぜ、こんなことが起きたのか」
宇宙港への出入りは厳重に管理されている。持ち込む荷物に関しても同様だ、とオーソンはつぶやく。
「あちらの方が上手だったか。あるいは我らの知らぬ爆薬を開発したかだな」
ミナがこう言い返す。
「それよりも、私としては子供達が一斉に騒いだという方が気に掛かるが」
彼女はそう言い返してきた。
その言葉はもっともだ、とルイーズもうなずく。
「第二世代、第三世代関係なく子供達が騒いだそうですが……世代を重ねたからかしら」
だとするならば新しい能力を得たと言うことになる。それがあちらの強硬派を動かすことにならなければいいのだが、と心の中だけでつぶやく。
「第一世代もだ」
しかし、ここでミナから爆弾発言が飛び出す。
「第一世代も、ですか?」
「そうだ。誰がどこでとは言えないがな」
オーブでも似たようなことが起きている、とミナが言う。
「そうですか……」
では別方面から検証をしないと、とルイーズはため息をつく。
「まぁ、偶然かもしれんがな」
それはないだろう。では、何が原因なのか。ルイーズはそれを考え始めた。
「どうしてキラに会えないんだ!」
カガリがまた爆発をしている。
「プラントにはナチュラルは入れん。入れたとしても、今のキラはお前のことは覚えておらん」
お前に会うことが逆効果になりかねない、とウズミは言う。
「もっとも、お前があの子を殺したいというのであれば話は別だが?」
さらに彼は言葉を重ねる。
「どういう意味です?」
「今のキラはばらばらになったガラス細工のようなもの。それをプラントに隔離することで修復している最中なのだ。お前が脇からあれこれ言えばまた壊れかねん」
それだけもろい状態だ、とウズミは告げる。
「いったい何が起爆剤になるかわからない以上、お前に会わせるわけにはいかない」
だから、諦めろ。きっぱりと言い切る。
「……だったら、どうしてサハクの双子は会いに行けるんだ?」
「あの二人がコーディネイターだからだ。医師の説明もしっかりと聞いていて何がまずいかを理解できている」
何よりも、とウズミは続けた。
「義務と権利を理解できるからな」
「……義務と権利、ですか?」
「そうだ。オーブの首長家として何をなさねばならないか。それを理解できなければダメだ。お前はそれが出来ていない」
出来ていない以上、キラとの接触は許可できない。ウズミはそう言いきる。
「お父様!」
「これに関しては異論は聞かんぞ。お前はアスハの後継なのだからな」
こう告げれば彼女はなにかを考えるような表情を作った。
悩むがいい、とウズミは心の中だけでつぶやく。
悩んで悩んで悩んで、そして真実へとたどり着く。その道程が首長への道へと繋がるのだ。そうすればお前は誰かを守る力を手に入れることが出来るだろう。
それこそが自分がカガリに望むことなのだ、と心の中だけで付け加えた。