トリカエバヤ

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「お父さんは?」
 キラはそう言って周囲を見回す。
「あちらに泊まり込みだ」
 読んでいた本から顔を上げることなくカナードがそう答える。
「ちなみにミナ様とギナ様はそれぞれお呼ばれで出かけている」
 今日は戻らないかもな、と言う言葉にキラは肩を落とした。
「お仕事?」
「そうだ」
「なら……しかたがない、ね」
 何か嫌な予感がするから皆の顔を見て安心したかったんだけど、とキラはつぶやく。
「嫌な予感?」
 それをカナードは聞き逃さない。即座に聞き返してくる。だが、キラはその問いかけに首を横にに振った。
「わからない」
 何が起こるかまでは、とキラはつぶやく。
「ただなにか悪いことが起きるような気がするだけだから」
 それがどのようなことかはわからない。それがもどかしいのだ、とキラは言葉をかみながらそう続ける。
「そうか」
 カナードはそう言いながら本を閉じた。そしてすぐに立ち上がる。
「兄さん?」
「とりあえずあいつに連絡を取る。お前がそこまで言う以上、きっとなにかが起きるだろうからな」
 そういうと彼がため息をついた。
「僕に……未来を見る、力はないよ?」
 キラはそう言い返す。
「力はないが……こういうときのお前のカンは必ず当たるんだ」
 間違っていればそれでいい。だが、万が一を考えると連絡しないわけにはいかない。カナードがそう続ける。
「事前に連絡があればいざという時の対処がしやすいだろう?」
 そう言うものなのだろうか、とキラは首をかしげた。
「当たるも八卦、当たらぬも八卦と言う言葉もあるしな」
 キラの頭をぽんと叩きながらカナードが笑う。
「……そういうもの、なのかなぁ?」
 わからない、とキラはつぶやく。
「お前はそれでいい」
「兄さん……」
「お茶飲むだろう?」
「……うん」
 こんなことでごまかされないから、と思いつつキラはうなずいた。

 だが、今回のことを感じたのはキラだけではなかった。
「……何か、嫌なものが来るよ」
「怖い……あれ、怖い……」
 そんな言葉を口にした子供が多くいたのだ。
「追いかけてくるよ」
「怖いよぉ、お母さん」
 子供達は口々にこう言い、自分の親にすがりついた。ただでさえ第三世代が生まれにくいコーディネイターだ。子供達の訴えに顔を蒼くする。
 問いかけなければ。しかし、どこに……と考えていたときだ。あの事件が起きたのは。
「……宇宙港が爆破された?」
 その報告にギルバートが絶句する。
「国内シャトルの方はどうだ?」
 だが、彼はそくざにこう問いかけた。
「無事です。とりあえず、現在使えないのは地球とのシャトルが発着するハッチです」
 即座に言葉が返ってくる。
「まずいな……」
 それにそう返すしかない。
「これでは食料がオーブから運ばれてきても受け入れることが出来ない」
 どうするべきか。
「ともかく……上の指示を仰ごう」
 勝手に動くことで状況を悪くするわけにはいかない。そうつぶやくとギルバートはきびすを返した。

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最遊釈厄伝