トリカエバヤ

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 最近周囲が騒がしい。
「……何かあったのか?」
 ディアッカがそうつぶやく。
「さぁな」
 それに言葉を返してきたのはラスティだ。
「俺たちがそろっているから、と言うわけじゃなさそうだが」
 イザークが口を開く。
「ラクス嬢がいるからでは?」
 ニコルが問いかけてくる。
「可能性はあるな」
 アスランはそう言ってうなずく。
「彼女はまだ婚約者が決まっていなかっただろう?」
「あぁ……」
「そういえば、そうだったな」
 そう言ってディアッカ達がため息をつく。
「誰がラクス嬢の婚約者になるか、か。くだらない」
 イザークがそう言う。
「結局は国が選ぶのだ。そこに俺たちの意思はない」
 それは間違いではない。だが、正解でもないはずだ。
「……その後のことは自分達の努力だろう?」
 愛情が生まれるのも仮面夫婦になるのも、とアスランが正論を言う。
「実際、それでうまく言っている夫婦の方が多いんだ。誰がなろうと構わないじゃないか」
 さらに彼はこう続ける。
「それよりも……俺としてはこれだけの重要人物が集まっている以上テロの方が心配だと思うが」
 護衛の姿は見当たらないが、と付け加えた。
「……大丈夫だろう」
 イザークが周囲を見回してつぶやくように口にする。
「そうやって人を脅かすのはやめろよな」
 ディアッカがアスランをにらみつけながら言った。
「脅しではない。オーブで国外追放になったテロリストがプラントに入国しているらしいとクルーゼ隊長からお聞きしたからな」
 アスランのこの言葉に四人は目を丸くする。
「クルーゼ隊長の言葉なら、信じないわけにはいかないが……何をしてオーブから国外追放になったんだ?」
「お前達も聞いたことがあるだろう? コーディネイターの大量誘拐事件に関わった人間だ」
 一足違いで逃げられて、それで国外追放という名のオーブに二度と入国させないことになったらしい。アスランの言葉に誰もが渋面を作る。
「そういえば……」
 ニコルが何かを思い出したかのように口を開く。
「その方々にお会いしましたよ。ラクス嬢と一緒に行った地球でのコンサートの帰りに」
 確か、こちらに赴任してきた武官のお子さんだとか……とニコルが微笑みながら言った。
「どんな奴だ?」
「……僕が会ったときはまだ事件の衝撃が薄れていなかったのか、他人の目を怖がっていましたね」
 その言葉にアスラン達は顔をしかめる。
 いったいどのような目に遭えばそんなことになるのか。想像もつかないからだ。
「……可愛かったか?」
 雰囲気を変えようとするかのようにラスティが問いかける。
「そうですね。雰囲気だけならば可愛い人だったと思います。小動物みたいな雰囲気で……」
 でも、性別まではわからなかった。ニコルの言葉に誰もが『だろうな』と思う。実際、そう言うニコルですら十分女の子にみえるのだ。そう考えれば相手が男か女かわからなくて当然だろう。
「どちらにしろ、もっとオーブについて知るべきかもしれないな」
 同胞もいることだし、とアスランは続ける。
 自分達でもわかっているのだ。このままではプラントの人口は減るばかりだと。
 どこからか新しい血を取り入れなければいけない。
 それはオーブしかないのだ。
「そうだな。お前と同じ意見だというのは不本意だが」
 イザークがそう告げると同時にすぐ側でなにかが爆発した。

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最遊釈厄伝