トリカエバヤ

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 眠っているキラを受け取るとカナードが部屋へと移動していく。
「さて……我らが出かけている間に何があった?」
 皆がそう言ってカズキをにらむ。
「……何があったと言われると、何もないと返すしかないんですが」
 まだ、と彼は言い返す。
「何があった?」
「キラに見合いの話がきました」
 その言葉を聞いた瞬間、ミナの視線に厳しい光が浮かぶ。
「ただ、全部相手が男なんだ」
 しかし、こう続けた瞬間、ミナが一瞬だけきょとんとした。そして即座に爆笑をする。
「まったく……キラの遺伝子がほしいのだろうが、男とは結婚できんだろうが」
「こちらが出した書類を鵜呑みにしているのでしょうが」
「あぁ、あれか。こちらではまだ訂正していなかったな」
 明日してこい、とミナが言う。
「どのような口実で?」
「遺伝子不良で性別が確定していなかった。こちらに来る前の検査でようやく確定したから訂正しておくと」
 そもそも、キラの書類にはそう書いてあったはずだが? と彼女は首をかしげる。
「ひょっとしたら、その部分が欠落していたかもしれません」
「ふむ。戻ったら調べなければな」
 手抜きはいけない、とミナは続けた。
「そうですね。手続きは明日やっておきましょう」
「あぁ、そうしてくれ」
 キラが《男》だと気づいたときの連中がどんな顔をするか。それが楽しみだ。
「あぁ、カガリの方も直しておかないといけないな」
 そちらの方は多少遅れてもかまわないだろうが。ミナはそう続ける。
「……連絡を入れておきますか?」
「そうだな……守秘回線が使えるんだったな」
「えぇ」
「なら頼むか。そうだな……秋声聞こえるか、で通じるだろう」
「かしこまりました」
 そう言って頭を下げればミナはうなずく。
「あぁ、あと一つ」
「何でしょう」
「ギナには話すな」
 相手を殺しに行きかねん、と言われてその光景があっさりと脳裏に浮かぶ。
「相手を殺しに行きかねませんね」
「あぁ。だから何が何でも隠し通せ」
「わかりました」
 さすがに殺しはしないだろうが、相手を血まみれにするぐらいはするだろう。最悪国際問題だ。
 それで帰れればいい。
 問題はそのことを盾に二人を取り上げられることだろう。
 絶対にそれは阻止しなければいけない。
 即座にそう判断するとカズキはしっかりとうなずいて見せた。

「どういうことだ?」
 意味がわからないと男は言う。
「……男同士で子供が出来るのか、と……」
「意味がわからん」
「書類の性別が間違っていたそうで……」
 訂正していたのだが、提出分は間に合わなかったのだとか。そう続ける部下に、男は忌々しそうに手にしていたカップを投げつける。
「うちにいるのは男だけだ。まったく……」
 せっかくいい手だを思ったのに、とそう続けた。その様子を部下は冷めた目で見つめている。
「まぁ、いい。それならそれで別の手段を執るまでだ」
 それに気づいているのかいないのか。男はこう口にしていた。

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最遊釈厄伝