トリカエバヤ

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 目の前にいる人物を見てキラは目を丸くする。
「ギナ、様?」
 どうして、と付け加えた。
「何。お前の顔が見たくなっただけよ」
 ギナはそう言って笑う。
「姉上は仕事だがの」
「……ミナ、さまも?」
 来ているの、とキラは問いかけた。
「些事のせいでの。こちらに来られる五氏族の人間は我ら以外おらぬ故」
 ナチュラルは足を踏み入れることも出来ぬから、とギナは付け加える。
「まぁ、それもテロを警戒してのことだろうがな」
 だからといって同盟国の人間まで閉め出さなくてもいいだろうに、とギナがぼやく。
「まぁ、良い。それよりも少しは体重が増えたか?」
 キラの体を抱き上げながら彼は問いかけてくる。
「増え、た?」
「重くなったように感じるぞ」
 そう言いながら彼はキラの体を抱きしめた。
「ギナ様、くる、しい」
 ぎゅっと抱きしめられる感触にキラはそう言い返す。
「おぉ、すまぬな」  こう言ってギナは腕から力を抜いてくれる。それでようやくキラは呼吸が出来るようになった。
「おぬしの元気そうで何よりよ」
 視線を横に流してギナが言う。そこにはカナードがいた。
「ようこそおいでくださいました。出来れば、次回からは事前に一言頂ければ幸いです」
 イヤミなのだろうか。カナードがそう言う。 「仕方があるまい。急に決まったからの。準備でばたばたしておったわ」
 それに、とギナは続ける。
「カズキには許可をもらったぞ」
「……あのくそオヤジ」
 ほうれんそうはどうした、とカナードはぼやく。
「で、中に入って良いのか?」
 それとも、キラを連れてでかければ良いのか? とギナが問いかけてくる。
「……どうぞ」
 キラを人質に取られては仕方がない。ようやくキラが以前のように笑顔を向けてくれるようになったのに、また怖がられるのはいやだ。
「では、失礼するぞ」
 ギナはそう言うとキラを抱えたままさっさと玄関をくぐる。その後をカナードはため息をついてついていった。
 リビングにつき、ソファーに腰を下ろしてもギナはキラを放さない。
 仕方がない。茶でも入れるか、とカナードがキッチンへ向かおうとしたときだ。
「ギナ、様」
「何だ?」
「僕のパ、ソコンに、変、なソフト、仕込んだでしょ?」
 その言葉に思わず足が止まる。
「ギナ様?」
 確認したが見つけられなかったのに、と思いつつカナードは問いかけた。
「変なソフトではないぞ。単なるウィルス駆除ソフトよ」
「本当に?」
「……それ以外には一定の日数、ログインしなければ連絡が来るくらいかの」
 それ以外の機能は持たせておらぬ、とギナが言う。
「他に……キーロガーと、べんきょ、の進み具合を確認する、機能があった」
 キラからの申告にカナードはため息をつく。
「やっていることがストーカーレベルですよ」
 そしてこう指摘する。
「ミナ様にお伝えします」
 しっかりと怒られてくださいね、と告げるとギナは固まった。その膝からキラは統べる降りるのも気づいていないだろう。
「お茶?」
「あぁ。今入れてくるから待っていろ」
 言葉とともにキラの髪をそっとなでた。


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最遊釈厄伝