トリカエバヤ

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 カナードが戻れば、キラはおとなしく学習プログラムで自習をしていた。
「ただいま」
 声をかければぱっと顔を上げる。
「お帰りなさい」
 そのまま立ち上がるとカナードに抱きついてきた。
「ただいま」
 その体を受け止めながら彼は微笑む。
「御用事、終わり?」
「あぁ。これでしばらくは一緒だ」
 カナードがそう言えばキラはほっとしたような表情を作る。
「それよりも、勉強の方は進んだのか?」
 その問いかけを耳にした瞬間、キラは先ほど目にした光景を思い出して肩をふるわせた。
「どうかしたのか?」
 不審に思ったのだろう。カナードが問いかけてくる。
「パソコン、が……怖いこ、とになった」
 今は使えているが、それでも爆発しそうで怖い。キラはなんとかそう告げる。
「……何をしたんだ?」
「ギナ、様の……つくっ、たプログラム、動かした」
 怖かった、と続けた。
「確認するから、ちょっと見せてみろ」
 その言葉にキラはカナードから離れる。即座に彼はキーボードへと手を伸ばした。
 いくつかのキーを叩いて何かを確認している。
「とりあえず爆発はしないから安心しろ」
 そして、すぐにこう言ってきた。
「ほんと、う?」
「嘘は言わない」
「よ、かった……」
 ほっとしたようにキラはつぶやく。本気で恐ろしかったのだ。
「そんなに怖かったのか?」
「……モニター、が……ビカビカって……おかしくなった、のか、と思った」
 ソフトを起動したら、とキラは続ける。
「ギナ様のお茶目だろう」
「……そう、かな?」
「あぁ。だから安心していい」
 カナードの言葉にキラは首をかしげた。そのまましばらく考えてから小さくうなずく。
「いい子だ。あぁ、一緒に買い物に行くか?」
「でて、いいの?」
「住民登録はしてあるし、買い物をしなければ食べ物もないからな」
 だからかまわないだろう、とカナードは笑う。
「ん」
 キラは彼の表情に安心する。そしておずおずと笑みを浮かべた。そうすれば彼の手が頭をなでてくれる。
「あぁ、そうだ」
 一つだけ注意をしておく、とカナードはまじめな表情を作ると口を開く。
「何?」
「お前のDNAをほしがる人間が来ても断れ。オーブの人間にはその義務はないからな」
 DNAは究極の個人情報だ、と彼は続ける。
「まだ婚約者はいらないだろう?」
「……婚約?」
 なぜ、その単語が出てくるのだろうか。そう思いながら彼の瞳を見つめる。
「この国ではDNAの相性がいい相手を婚約者としているんだ。しかも、新しい血をほしがっている」
 俺やお前は格好の獲物だと笑う。
「そ、なの?」
「あぁ。だから絶対に渡すなよ」
 わかった、とキラはうなずいてみせる。
「いい子だ」
 そう言うとカナードがまた頭をなでてくれた。


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最遊釈厄伝