トリカエバヤ
09
気がつけばキラはカナード達とプラントへ向かうことになっていた。
「……どうして?」
いったいなぜ、そういうことになったのか。意味がわからないとキラはミナの顔を見上げた。
「不本意だがの。ここではお前に近づくものを判別できぬ」
ミナの顔を見上げながら問いかければ彼女はこう言葉を返してくる。
「あちらであれば多少の制限は可能だろう」
入国の際、しっかりと検査されるからな。ミナはそう付け加える。
「私たちとしてはここにいてほしい。だが、現状、お前を守り切ることが難しいからな」
どこに敵が潜んでいるかわからない。自分達の身近も安全ではないのだ、と彼女は続ける。
「三年だ。その間だけ我慢してくれ」
その間にこちらの体制をしっかりと整える、とミナは言い切った。
「無理、しない?」
キラはそう問いかける。その瞬間、キラの頭にミナの手が落ちてくる。そして、優しくなでられた。
「大丈夫だ。この際だ。徹底的に害虫退治をする」
だから、お前も安心しておれ、とミナが微笑んだ。
「それよりもお前も気をつけよ。カナードから離れるでないぞ」
カナードも良いな、と視線を彼に向ける。
「当然です」
真顔でカナードが言い返す。
「ならば良い」
気をつけて行ってくるがいい。そう言うとミナはまたキラの髪をなでてくれた。
それからシャトルに乗ってプラントへと向かった。
シャトルに乗っている間、何もすることがなくて暇だったと言っていい。シートベルトを外してもいいというサインが出た瞬間、カナードがさっさとベルトを外した。
「キラ。展望室に行くぞ」
そう言いながら彼はキラのシートベルトを外してくれる。
「い、いの?」
勝手に移動して、とキラは首をかしげた。
「退屈だろう。行っておいで」
カズキが微笑みながらそう告げる。
「ただし、許可のないことはしないこと。特にカナード」
名指しされたカナードがさりげなく視線をそらす。
「……どう、したの?」
思い当たるものがあるのか、とキラは問いかけた。
「ちょっと気になったから進入禁止区間に入り込んだだけだ」
視線をそらすとカナードが言い返してくる。
「今回はお前がいるから、そんなことはしない」
おとなしく展望室に行くだけにする、と彼は付け加えた。
「そうしなさい」
カズキのその言葉を合図にカナードは立ち上がる。そしてキラへと手を差し出した。
「不安ならお前が捕まえておけ」
さらに彼はこう付け加える。
「あぁ。それが一番だな」
カズキもそう言ってうなずく。
いいのだろうか、とキラは悩む。
だが、差し出された手を取らないのも失礼に当たるのではないか、と思う。
おずおずと手を差し出すとしっかりと彼の手を握りしめた。そうすれば彼はうれしそうに笑う。それでこれが正解だったか、とほっとした。
「じゃぁ、行ってくるな」
キラが立ち上がったのを見てカナードはそう宣言をする。そしてキラの手を引いてシャトル内を移動し始めた。