トリカエバヤ
07
「どうやらセイランのバカが聞きつけたらしい」
ミナがため息とともにそう告げる。
「それで、どうするのだ?」
「アメノミハシラに連れて行く。あそこであればキラのけがが治るまでは安全だろう」
そして、と彼女は続けた。
「治り次第、プラントへと行かせる」
「姉上!」
「不本意だが、ブルーコスモスの影響が一番及ばないのはあそこだ」
何よりもセイランが手出しできない。そう続ける。
「あの子をあちらに任せるのは次の大使の任期期間だけだ」
それならば長くて六年だろう。しかし、だからといって不安が消えるわけではない。
「セイランからは手出しできないかもしれないが……我らも何も出来ぬぞ?」
「ラウがおろう」
すぐに駆けつけられずとも、あれがしばらく時間を稼いでくれよう、とミナが続ける。
確かにそうだろうとは思う。
しかし、とギナは心の中でつぶやく。あれにも役目がある。キラにだけ意識を向けてはいられないだろう。
「それに、あちらにやる人間は優秀だぞ?」
「誰だ?」
「パルスだ」
「カナードの養い親か」
「あぁ。十分であろう?」
何よりもカナードがいる、とミナは付け加える。
確かに彼であればキラを守ってくれるだろう。年齢が足りないところはパルスがなんとかするはずだ。
「否定は出来ぬ」
それでも不安が残るのはなぜか。
自分がそばにいないからだ、とすぐに答えを出す。
「やはり我もあちらに行くべきか」
そうすれば何があろうと対処できるであろう。そうつぶやく。
「ダメだぞ、ギナ」
即座にミナがこう口にした。
「今、お前にいなくなられると厄介なことになる」
自分達には信頼できる味方が少ない。そうである以上、一人でもかけると困るのだ。ミナがそう続ける。
「我はかまわぬが?」
「……私達が困る。それに、最終的にキラも困ると思うが?」
お前が本土で仕事をしないと、と言われてギナは顔を上げた。
「どういう意味だ?」
自分一人いなくても大丈夫だと思っていたが、それでキラの不利益になるならば困る。だからこそ、ギナは問いかけた。
「簡単なことよ。我らには今手が足りぬ。特にキラに関わることはうかつに誰彼に命じられぬからの」
今のキラの状態をばらしたくない。だから、とさらにミナは言葉を重ねる。
「……仕方がないの」
姉上がそこまで言うのであれば今しばらくおとなしくしていよう。ギナはそう告げる。
「そうしてくれ」
面倒ごとを引き起こすのは一人で十分だ。ミナの言葉にギナは首をかしげる。
「姉上?」
「これからカガリに今回のことを話さねばならぬ」
そのときに彼女がそのような反応を見せるか。それを考えれば頭が痛い。ミナはそう告げる。
「……あれもキラのそばから離れたがらぬであろうな、確かに」
確かに、とギナもうなずく。
「今からどうやって止めるか。ウズミが頭を悩ませておったわ」
「それはそうであろうよ。ようやく一緒にいられると考えておるのにプラントに行かれてはナチュラルであるアレは追いかけられぬ」
キラが戻ってくるのを待つ以外にない、とギナも言う。
「それが一番安全だとわかっていてもの」
本に困った奴よ、とミナがため息をつく。
「まぁ、おいおいたたき込んでいけば良かろう」
キラがいない間に、と付け加える。それにギナもうなずいて見せた。