星々の輝きを君に
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戦争が終わったと実感できたのは、こうしてアスハ宮殿に戻ってきてから、だとは笑っていいのか。
「まぁ、すべて丸く収まったしな」
それだけでいい。カガリはそう思う。
「だから、そんなに不安そうな表情を作るなって」
キラ、と彼女は視線を移動させる。
「あいつらは、すぐに押しかけてくるさ」
さすがに、戦地から直接、こちらに来るわけにはいかなかったらしい。辞令だの何だのという手続きを踏む必要があるのだ。
それでも、ラウとラクスが協力をしてくれると言っていた以上、必ず彼らはオーブにやってくるだろう。ウズミとサハクの双子も働きかけると言っていたし……と彼女は微笑む。
「わかっているんだけど、ね」
でも、と言いながらキラはクッションを抱きしめている。その様子がかわいいと言っては本人に怒られるだろうか。
しかし、実際にかわいいのだから仕方がない。
「大丈夫だ」
カナード達もいない今がチャンスだろうか。そう考えながら、カガリは彼女の体を抱きしめる。
「いざとなったら、個人的に呼び寄せてやる」
理由なら、いくらでも考えてやるさ……とそのまま耳元でささやいた。
「まぁ、私が動かなくてもラウ兄さん達が先に動きそうだけどな」
そう言わなければいけないのはちょっと悔しい。だが、これも経験の差なのだろう。だから、今後、何とかしていくしかない。
「ともかく、あいつが浮気をすることと婚約が破棄されることはないから、安心しろ」
ディアッカがくっついているし、何よりも、あいつが本気でキラに惚れている。だから、万難を排してやってくるだろう。彼女はそうも付け加えた。
「うん……それは、心配してない」
それにキラはこう言い返してくる。
「イザークさんが約束をしてくれたから」
「……じゃ、何を悩んでいるんだ?」
これではなかったのか。そう思いながら聞き返す。
「セイランの人たちがうるさいの」
そうすれば、キラは小さな声でそう言ってきた。
「……セイランの?」
「ウナト様達が失脚したでしょう? このままだとまずいからって」
そういう理由で、何故、自分に求婚しようとするのかがわからない。彼女はそう言う。
「でも、僕はまだましだよ?」
カナード達が追い払ってくれているし、何よりもハルマが全部断っているから……と彼女は続けた。
「大変なのは、ムウ兄さんだね」
そのせいで、せっかく口説き落としたマリューとの仲がまずいことになっているらしい。
ただでさえ、オーブの人間だと言うことを黙って地球軍にいたせいで大変だったのに……と言われて、カガリもうなずいて見せた。あのムウがなりふり構わずに彼女に説明していたシーンを自分も目にしたことがあるのだ。
「でも、何でムウ兄さんなんだ?」
ラウはプラントにいるから除外されるとしても、カナードもいるだろうに、と思う。
「ムウ兄さんだけがナチュラルだから、かな?」
キラはそう言って首をかしげた。
「なら、お前だってコーディネイターだろう?」
「……僕は、カガリと双子だから」
そう言うことではないか、とキラは言い返してくる。
「なるほど」
自分がキラを大切にしてるから、彼女を取り込めばアスハがセイランを守ってくれると判断したのだろう。
それは間違っていないかもしれない。
だが、そのためだけに彼女を利用しようとするのは許せない。
「そう言うことなら、ギナ様を巻き込んで動くのが一番いいな」
任せておけ、と彼女は言う。
「でも、カガリ」
「もうすでにヤマト家だけの問題じゃなくなっているようだからな」
アスハも関わっている。
いや、それだけではない。最悪、オーブとプラントの関係も壊れかねないだろう、と彼女は続けた。
「まぁ、そうでなくても、お前にそんな表情をさせるやつは許せない。徹底的に害虫駆除をがんばるさ」
憂さ晴らしにもなるだろうし。カガリはそう言って笑う。
「無理しないでね?」
「わかっている」
キラの言葉にカガリはきっぱりと言い切った。