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イザークとディアッカがオーブへと赴任してきたのは、終戦から半年後のことだった。
「イザークさん」
彼の顔を見れば、やはりうれしい。
「悪かったな、遅くなって」
彼はまっすぐにキラのそばに歩み寄ってくると、こう言った。
「仕方がないことはわかっていたし……それに、ちゃんと連絡をしてくれていたから」
安心して待っていられた、とキラは微笑む返す。
「それに、ラウ兄さんもこまめにあれこれと教えてくれたし」
さりげなく付け加えた言葉に、何故かイザークの頬が引きつる。
「隊長が、何と?」
まずいことを伝えられたのではないだろうな……と彼は続けた。
「ごく普通の内容だと思うけど……」
イザークが何を心配しているのかわからない。そう思いながらキラは言い返す。
「ならいいが……」
彼がため息とともにこういったときだ。
「こいつはこう見えても抜けているところがあるからさ。そのせいでお前に愛想を尽かされたらどうしようと考えているんだよ」
こう言いながら、ディアッカがイザークの肩越しに顔を出す。
「久しぶり、ディ」
元気そうで何よりだ、と視線を向ける。
「そのくらいで僕がイザークさんを嫌いになるはずがないでしょう?」
それに、と微笑みのまま続けた。
「自分のことを棚に上げていていいの?」
ラウの性格を忘れたのか、と言えばディアッカの表情がこわばる。
「……まさか……」
「カガリに笑われるのは覚悟していてね」
ついでに、カナードが鍛え直すと言っていた……と言葉を重ねれば、彼は「マジ?」と聞き返してくる。
「兄さんが冗談を言うと思う?」
「……思わない」
あきらめるしかないのか、と彼はため息をつく。
「こうなったら、お前もつきあえよ?」
開き直ったかのようにイザークへと声をかけた。
「キラを守るためなら、どれだけ実力があっても十分と言うことはないだろうからな」
望むところだ、と彼は即座に言い返している。
「そのセリフ、後悔しません?」
キラはさりげなく視線を移動させながら問いかけた。
「もちろんだ」
イザークがうなずく。
「それは楽しみだな」
同時に響いてきた声に二人の動きが止まった。
「兄さん、どうしたの?」
とりあえず、と思いながらキラは問いかける。
「そいつらと再会を喜びたいのはお前だけじゃない、と言うことだ」
特にカガリが手ぐすね引いて待っている、とカナードが言い返してきた。
「と言うことで、行くぞ」
そのまま、彼はまだ反応を返せない二人の襟首をつかむ。
「うん」
キラの言葉を合図に彼は歩き出す。キラもまた、彼らの後を追いかけた。
それもまた、幸せの構図だろう。
少なくとも、キラはそう考えていた。
終