星々の輝きを君に
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地球軍の捕虜に関してはともかく、オーブ組をどうするか。実は、それが一番の難問かもしれない。
「さすがに、キラはまだ戻さない方がいいよな」
本土に、とムウは言う。
「そうですね。あちらではまだどこにブルーコスモスがいるかわからない」
「しかし、いい加減、父さん達にあの子の顔を見せないとまずいですよ」
ラウの言葉にカナードがこう言い返す。
「それはそうだな。結局、イザークのことは知っていてもあったことはないからな。こっちだけで婚約を決めてしまったし」
もっとも、自分達だけではなくカガリとギナも認めた以上、彼らが意義を口にすることはないだろう。
それでも、だ。
「手順として、問題ありだよな」
ぼそっとムウは呟く。
「それなら、あなたがきちんと手順を踏めばいいでしょう?」
即座にラウが突っ込んでくる。
「そういうお前はどうなんだ?」
こうなれば、と聞き返す。
「まぁ、適当に」
だが、さらりと受け流されてしまった。
「イザークについては適当なところでオーブに出向させましょう。ディアッカ込みで」
その方がアスランに悟られるまでの時間が稼げるはずだ。その意見には賛成だ。
「で、その二人は?」
ふっと思いついて問いかける。
「イザーク達はカガリと一緒です。キラは、ギナ様と一緒です」
何でも、あの子に探してほしいデーターがあるとか……とカナードが続けた。
「あまりあの子にハッキングを奨励しないでほしいものだが」
「無理だろうな。ギナが言って来ると言うことは、本気でやばいデーターだろうし」
キラ以外であればばれる可能性がある場所なのだろう。
「お前は立場上、手を出せないだろうしな」
カナードでは実力的に劣る。
言外にそう告げれば、本人はいやそうな表情を作った。
「まぁ、ギナがいるなら大丈夫だろう」
暴走しそうになっても途中で止めるに決まっている。だから、とムウは自分に言い聞かせるように付け加えた。
「不本意ですが、仕方がありませんね」
オーブ――いや、自分達に不利な状況になりかねないのであれば、とラウは言う。
「それにしても、何のデーターなのか、気になりますね。後で確認しておいてくれるかな?」
カナード、と彼は視線を移動させた。
「そうですね。俺も気になっていますから」
カガリ達の方も気になる、と彼は続ける。
「もっとも、こちらの方が優先でしょう?」
キラのためには、と彼はいった。
「……お前も、キラが結婚してもあいつらの新居に居座りそうだな」
ため息とともにムウはそう言う。
「いけませんか?」
しかも、彼は真顔で言い返してくる。
「その程度でがたがた言うようなら、即座に離婚させます」
それはそれで問題があるのではないか。そう思わずにいられない。
「……ほどほどにしておけよ」
本当に、と思いながらこれだけは釘を刺しておく。
「でないと、キラに『嫌い』と言われかねないからな」
この一言に、カナードが珍しく表情をこわばらせる。
「まぁ、あいつがそう簡単にそんなセリフを言うはずがないがな」
とりあえずフォローしておく。しかし、それが彼の耳に届いた角かはわからない。別に届かなくてもかまわないが、とムウは早々にさじを投げることにした。