星々の輝きを君に
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それでも、キラの気持ちは収まらなかったのか――それとも別の理由からか――ラウが持ってきたパソコンを使ってどこかにハッキングを仕掛けている。
「……余計なことを」
そんな彼女を見守りながら、ムウは思わずこう呟いてしまった。
「そう言うな」
苦笑とともにラウが言い返してくる。
「セイランとブルーコスモスが結託していたと言う確固たる証拠は必要だろう?」
つぶすなら徹底的に、と彼は続けた。
「そうしないとキラだけではなくカガリも幸せになれないだろうからね」
セイランがいる以上、彼女の恋愛に口を挟んでくるに決まっている。そんなことをさせないためにも、と彼は言い切る。
「本当に、お前は妹たちには甘いな」
苦笑とともにそう言う。
「弟にも優しいつもりですよ?」
一応は、とラウは言い返してきた。
「ただ、男の場合、多少手厳しくしないとしつけによくありませんからね」
それで失敗した人間がいるだろう、とため息をつく。
「誰のことだ?」
いやなものを感じてムウはこう聞き返す。
「さぁ、ね。少なくとも、私の弟ではないよ」
カナード以外の弟はいない、と言外に言い返される。
「まぁ、ディアッカ達兄弟はきっちりとしつけられていると思うがね」
イザークやニコル、それにミゲルも……と付け加えられれば、彼が誰のことを言いたいのかわかってしまった。
「……あいつはなぁ……カリダさんの言葉を聞いていれば、もう少しましだったのにな」
アスランがそうしてくれていれば、キラを傷つけずに済んだのだろうか。
「そうですね。せめてあなたのように他人への気遣いを覚えてくれればよかったのに」
「それはイヤミか?」
「どうでしょうね」
にやりと笑いながら彼は言い返してくる。
こいつは、と思ったときだ。
「兄さん」
キラが二人を呼ぶ。
「どうした?」
何かあったのか、と即座にムウは立ち上がった。そして、大股に彼女へと歩み寄る。もちろん、ラウもだ。
「……これ」
そうすれば、彼女はモニターを指さしてみせる。
「これって、まずいよね?」
その内容は確かにものすごくまずいものだ。もっとも、自分達やアスハ、それにサハクではないが。
「とりあえず、保存しておいてくれ。ギナに見せて相談しよう」
うまくいけばいろいろと膿を出せるかもしれない。
「うん、わかった」
言葉とともに彼女はすごいスピードでキーボードをたたく。
「さて……後は、何が必要かな」
と言っても、今日のところはキラに休憩を取らせなければいけないのではないか。
「それも相談してからでいいでしょう。そろそろカナードとカガリも戻ってくるでしょうし」
イザーク達も顔を出すのではないか、とラウが言って来る。
「そういえば、歌姫はどうしているんだ?」
てっきり、キラの顔を見に来るものだと思っていたのに……とムウは問いかけの言葉を口にした。
「本国と連絡を取っておいでですよ」
不本意だが、彼女に任せておくのが一番確実だ。ラウはそう言う。
「そうか」
確かに、他のメンバーよりは公平に物事を伝えてくれるだろうが……しかし、彼女はキラ達と同じ年齢ではなかったか。
もっとも、年齢だけで相手を判断してはいけないのだ、と言うこともわかってはいる。特にコーディネイターの場合は、だ。
「じゃ、それが終わったらでいいな」
彼女と話すのは、とムウは言う。
「と言うことで、終わったなら、お茶を淹れてくれるか?」
キラが淹れてくれるのが一番うまい、と付け加えれば、彼女はどこかうれしそうにうなずいてみせる。
それが彼女の意識をそらすためだと気づいているのは、間違いなくラウだけだろう。だが、それでいいと思ってしまうムウだった。