星々の輝きを君に

BACK | NEXT | TOP

  141  



「イザークさん?」
 目の前に現れた相手の姿に、キラは信じられないというように問いかけた。
「あぁ、俺だ」
 そう言いながら、彼は微笑んでみせる。それだけではなく、そっとキラの頬に触れてきた。
「……俺もいるんだけどな、一応」
 ぼそっとディアッカが呟く。それに他の者達は苦笑を浮かべた。しかし、キラの耳には入らなかったらしい。
「いいのですか? お仕事は?」
 まっすぐに駆け寄ってくると、彼女はイザークに問いかけてきた。
「とりあえず、戦闘は終わったからな。お前の顔を見に来た」
 微笑みながらそう言い返せば、キラの表情がさらに輝く。
「……完全に、俺の存在はアウト・オブ・眼中な訳ね」
 それを見て、ディアッカが完全にふてくされる。しかし、自分よりも体格のいい相手がそんなことをしていても、気色悪いだけだ。改めてそう実感をする。
「冗談に決まっているじゃない」
 だが、それ以上にキラのこのセリフに驚きを隠せない。
「……わかっていたのか?」
「うん。でも、ここまで落ち込むとは思わなかった」
 大丈夫? と口にしながら、彼女は彼の顔をのぞき込む。
「……ひょっとして、お前、怒ってる?」
 それにディアッカはこう聞き返した
「ちょっとね」
 苦笑とともに彼女はうなずく。
「何かあったのか?」
 戦闘は終わったのに、とイザークは眉根を寄せる。
「カナード兄さんがけがをしたんだよ」
 カガリがため息とともに口を開く。
「まぁ、かすり傷だけどな」
 それに、戦闘でけがをしたわけではない……とムウが続ける。
「じゃ、どうしたんですか?」
 キラからいじめられた以上、聞く権利はあるだろう。ディアッカはそう主張をする。
「ユウナを連れに行ったんだよ、ギナ様と」
 この一言を聞いただけで状況が想像できたような気がするのはどうしてだろう。
「なるほど。で、あいつが自爆しそうになってそれに巻き込まれた、と言うことか?」
 そのまま、こう口にした。
「結論から言えば、そう言うことだ」
 ムウはそう言ってうなずく。
「それで、キラが怒っているわけだ。俺はあきれているが」
 見捨てればいいものを、と彼が言外に付け加えたような気がするのは錯覚だろうか。
「かといって、あいつをブルーコスモスに持って行かれるのも困るからな」
 彼の存在を口実に使われれば、オーブは微妙な立場に追い込まれる。
「けがをしていようが何だろうが、ようは生きていればいいんだしな」
 面倒だよな、と彼は続けた。
「本当、疫病神だよ、あいつは」
 自分達にとって、とカガリもうなずく。
「でも、お前らが来てくれてよかったよ。出ないと、キラが何をしでかしたかわからないからな」
 地球軍はともかく、セイラン家にウィルスなんて送りつけられたらどうなっていたか。
 カガリのこのセリフにイザークだけではなくディアッカも苦笑を浮かべる。
「やるときは、セイラン関係だけにするよ……」
 それに、キラはぼそっと呟く。
「だから、それはやめとけ。カナードのけがに関しては、本人に責任をとらせればいいだろう?」
 これから一週間、毎日、キラのリクエスト通りのおやつを作らせるとか……とムウが無難な提案をする。
「あ、それいいな。それなら、私も楽しめる」
 即座にカガリもうなずいた。
「……その前に、どうせなら、俺とつきあえ」
 せっかく会えたんだから、話をしよう……とイザークは苦笑とともに告げる。
「ごめんなさい」
 慌ててキラがこう言ってきた。
「気にするな。そういうお前を見ているのも楽しいからな」
 こう言い返した瞬間、ディアッカ達が何故か視線をさまよわせ始める。イザークはそれを無視してキラにほほえみかけた。


BACK | NEXT | TOP


最遊釈厄伝