星々の輝きを君に

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 アズラエルが捕縛されたからか。
 それとも、別口から地球軍とブルーコスモスの関係が伝えられたからか。
 バルトフェルドたちがいる戦場に夜明けが訪れる前に地球軍は降伏をした。
「さて……これからはつまらない事務作業かな?」
 本国から専門の人間が来るまでは、と彼は呟く。
「あきらめることね」
 クスクスとわらながらアイシャがそう言い返してくる。
「仕方がない。ダコスタ君にがんばってもらおう」
 即座にこう言う。
「……ダコスタ君も、アンディの副官になってよかったのかしら?」
 逃げられるかもしれないわよ、と彼女はため息をつく。
「何を言っているのかな、アイシャ。俺にはお姫様方と捕虜を奪われないようにする義務があるんだが?」
 ブルーコスモスがこのままおとなしくしているとは思わない。そういえば彼女は「そうね」とうなずいてみせる。
「まだまだ気を抜くわけにはいかないわ。いろいろな意味で」
 でも、と彼女は表情を和らげた。
「とりあえず、キラちゃん達に戦争が終わったことを教えてあげましょう」
 そうすれば、彼女の不安は一つ減る。それだけでも、彼女にとってはいいのではないか。
「早く行かないと、クルーゼ隊長か他の誰かにその役目をとられるわよ」
 いいの? と彼女はさらに言葉を重ねた。
「それは、ちょっといやだね」
 苦笑とともに言い返す。
「どうせなら、おいしい役は確保しておかないと」
「でしょう?」
「では、最低限の人員を残して、俺たちはいったん、レセップスに戻るか」
 ついでにムウと捕虜の扱いについて話し合っておこう。そう判断すると、彼は指示を出し始めた。

「終わったか」
 ほっとしたようにイザークが呟く。
「だな」
 ディアッカがすぐに言葉を返してくる。
 後は、どうやって地球軍とブルーコスモスを完全に切り離すか。それを考えるべきだろう。
「ってことは、俺たちは少し、休憩が取れるか?」
 久々にキラの顔も見られるかな、と彼は続ける。
「どうだろうな」
 確かに、彼女の顔を見に行きたい。しかし、とイザークはため息をつく。
「俺はまだ、あいつが信用できない」
 彼はそう続ける。
「……まぁ、それは俺も同じだが」
 今は落ち込んでいるが、いつ浮上するかわからない。そうなれば、またキラを追いかけ回すに決まっている。ディアッカはさらに言葉を重ねた。
「でも、俺が行くことに関しては、アスランも文句は言えないんじゃね?」
 そして、イザークは自分の親友だ。一緒に行ったとしても誰も変に思わないのではないか。
「まだ、おまえらの婚約はあいつには、知られない方がいいだろうし」
 その前にさらに突き落とせればいいんだが。彼のこの言葉に苦笑を深めるしかない。
「それこそ、俺たちの手には余る。ラクス嬢に任せるしかないだろうな」
 女性の手を煩わせるのは申し訳ないが、とそう言った。
「まぁ、そうだな」
 だが、ラクスならいやがらずに引き受けてくれるだろう。
「ともかく、顔を見せてやれば落ち着くって」
 少なくともここでの戦闘が終わったと、キラも実感するはずだ。そう言われればイザークもこれ以上拒むことはできない。もちろん、最初から拒めるはずもなかったが。
「それが一番だな」
 そうすれば彼女は笑ってくれるだろうか。イザークはそんなことを考えていた。


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