星々の輝きを君に
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予想外の場所で爆発が起きている。
『あちらは、イザーク達が向かっていた場所ですよね?』
ニコルがこう言っている声が耳に届く。
『あいつらのことだから、ミスったはずはないしな』
即座にミゲルが言い返す。
『それに、あの程度の爆発なら損傷は軽微だろう』
それよりも、と彼は続ける。
『俺たちに何かを知らせようとしているんじゃないのか?』
あるいは地球軍かもしれないが、と付け加える声に複雑な感情が含まれていた。
『だが、俺たちは動けないな』
ここを死守しなければいけない。
『ミゲル!』
だが、ニコルはその返事に不満そうだ。
『ここにいる連中が背後から襲いかかったらどうする?』
いくら何でも負けるぞ、とミゲルが指摘している。
『第一、俺たちがあいつらを信じなくてどうする?』
『……そう、ですね。確かにその通りです』
さらに重ねられた言葉にニコルは何かに気づいたのか。こう言い返している。その言葉には信頼感があふれていた。
「……うらやましいな」
無意識のうちに言葉がこぼれ落ちる。その声を耳にして、アスランは自分がそんなセリフを口にしたのか、と初めて気づいた。
「俺は……何を?」
言っているのか、と慌てる。
「キラ以外の言葉なんて、必要ないのに」
それとも、彼女からはもう、そんな言葉を得られないとわかっているから、気弱になったのだろうか。
誰でもいいから、自分を認めてほしい。
そう考えてしまったのはそのせいだ。
「……俺は……」
本当にどうすればいいのだろう。
いや、それ以前に、どうなってしまったというのか。
「こんなに弱かったのか?」
キラという支えを失ってしまえば、とため息をつく。
その支えすら、自分が作り出した幻想だったのかもしれない。
だから、新たな支えを探そうとしているのだろうか。
「……そんなはずはない!」
自分はもっと強かった。たとえ、キラがいなくても一人で立っていられる。
それを証明しなければいけない。
「でなければ、あの人達を見返してやれない!」
せめてそのくらいしなければ、自分はいつまでたっても浮上できないままだ。
「そうすれば、お前も少しは俺を見直してくれるかな?」
キラ、とアスランは呟く。
その思いのまま、目の前の敵へと意識を戻した。
「まったく……困ったものだね」
そのつぶやきをらはしっかりと耳にしていた。
「結局、何も変わっていないと言うことか」
本質は、と彼は続ける。それでも、キラのそばに近寄ってはいけないと自覚しただけでもましなのかもしれない。
しかし、今のままではいつ、元に戻るかわからない、と言うのも事実だ。
「正式に公表する前に、彼の中の気持ちを完全につぶしておかなければいけないな」
そのためには何をすべきか。そう呟いたときだ。手元の端末が小さく自己主張をする。
「カナードからか」
ギナが暴走しているのでなければいいが。そう言いながら回線を開く。
『アズラエルを追い込みました。適当に捕まえてください』
しかし、それは予想していなかった言葉を伝えてきた。
「そうか。では、私も出よう」
とりあえず、厄介事は順に片付けるに限る。そう判断をして言葉を返す。
『わかりました。あぁ、あの二人のいる方向ですから』
うまくいけば、彼らが捕縛するだろう。その言葉に、ラウは小さな笑いを漏らした。