星々の輝きを君に
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目の前に一台、不自然な動きをする装甲車があった。
「いくら押されているからといって、あれは変だな」
普通なら、あり得ない……とカナードは呟く。
「……まさか……」
ひょとして、あれに乗り込んでいるのだろうか。
あるいは指揮官かもしれない。
「どちらにしろ、連中にすれば守らなければならない人間か」
それならば、確保しておくのが一番いいだろう。
「どちらにしろ、ラウ兄さんの手柄になるか……あぁ、あいつでもいいな」
そうすれば、少しはプラント内での発言力が増すのではないか。
「まぁ、あの母君がいれば大丈夫だろうがな」
キラが息子よりもかわいいと言ってはばからないらしい女傑。彼女がいればあちらでも心配はいらないとわかっている。
「でも、あれがいるからな」
今はどん底まで落ち込んでいるらしい。しかし、いつ浮上してくるかわかったものではない。
「本当は徹底的にたたきつぶしてやりたいが……」
ラウから許可が出ない以上、我慢するしかないだろう。
「まぁ、その分、連中で憂さ晴らしをすればいいか」
それに関しては、すでに実践している人間がいるし……とカナードはため息をつく。
「適当なところで止めに入らないと、ロンド・ミナ達に後で何を言われるかわかったものではない。
本当にやっかいな人だ。
そう思っても、その後始末がいやではないと考える程度には好きなのだろう。
「俺も甘くなったものだ」
そう呟くと、早速行動を開始した。
「……妙だな」
イザークは小さな声でそう呟く。
「何故、あそこだけが手薄なんだ?」
まるで自分達を誘い込もうとしているようだ。
『あぁ……なんか、手ぐすね引かれているようだよな』
即座にディアッカがこう言い返してくる。
『で、どうするつもりだ?』
さらに彼は言葉を重ねた。
「確認するだけだろう」
にやり、とイザークは笑う。
「幸い、そのための駒は周囲にたくさんいるしな」
『……お前、性格悪くなったんじゃね?』
まるでカナードみたいなセリフではないか。ディアッカが感心したようにそう言ってくる。
「ほめられている、と言うことにしておこう」
これがラウなら少しは反発したかもしれない。だが、カナードであればそんな気持ちにはならない。
それは、彼がどのようにしてキラを守ってきたのか。それを知っているからだ。
「お前はどうするんだ?」
つきあうのか。それとも、と口にする。
『お前に何かあったら、キラが泣くからなぁ』
つきあうに決まっているだろう? と彼は言い返してきた。
「当てにするぞ」
『任せておけって』
即座に返される言葉が心地よい。
「もちろんだ」
じゃ、行くぞ。その言葉とともにイザークはデュエルを発進させる。そのまま、敵陣へと突っ込んだ。