星々の輝きを君に
137
キラが小さなあくびを繰り返している。
「眠いなら、寝ていいぞ」
そんな彼女の仕草に微苦笑を向けながら、ムウは言った。その間に、厄介事は終わっているだろうから、と心の中で付け加える。
「でも……」
「他にすることがないんだ。かまわないさ」
自分達には、と彼は続けた。
「それに、きっとお前たちはこの戦いが終わったときの方が忙しいとお思うぞ」
いろいろな意味で、と言いながら、ムウはそっと彼女の髪をなでる。
「確かに、そうかもしれませんわね」
ラクスもそう言ってうなずく。
「わたくし達がそろってここにいること。それが重要かもしれませんわ」
いろいろな意味で、と彼女は続ける。
「そのときのために、体力を温存しておく必要があります」
ですから、休みましょう……と微笑んだ。
「……ベッドが二つしかないよ?」
そういえば、とキラは呟く。
「くっつけてしまえばいいだろう?」
そうすれば、三人で寝られる。カガリがそう言って笑う。
「だめなら、私は床で寝るさ」
なれているから、と彼女は続けた。
「兄さんも、そうでしょう?」
そのまま視線を向けてくる。
「俺は軍人だからな」
サバイバルも訓練の中にあった。それに比べれば、部屋の中なだけましだ……とムウは笑った。
「そう言うことだ」
カガリもうなずく。
「……カガリ……」
「お前は頭脳派なんだから、睡眠は重要だろう?」
ラクスは歌姫だ。その歌姫が目の下に隈を作っていたら、それはそれで問題だろう。
「私は、いざとなれば三日ぐらいは徹夜しても平気だからな」
「僕も、そのくらいは平気だよ?」
キラが言い返している。
「お前は、その後、すぐに体調を崩すから却下だ」
その言葉を即座にカガリが否定した。
「それに……カナード兄さんが怖いんだが」
いろいろな意味で、と彼女は付け加える。
「……否定できないな。そうなったら間違いなくラウまで参戦するぞ」
「だけならいいです。ギナ様が口出ししてきたら、私はともかく、ムウ兄さんはまずいことになると思いますよ」
そんな怖いことを言うんじゃない。思わずムウは心の中でそう呟いてしまった。
「……兄さん達がムウ兄さんにそんなこと、するかな?」
どうやら、二人はキラにはそんなところを見せていなかったらしい。彼ららしいな、と苦笑を浮かべる。
「あいつらは、お前のこととなると理性が飛ぶからな」
だから、何をしてくれるか想像が付かない……と続けた。
「あれに対する言動を見ていれば想像できるだろう?」
この言葉にキラはうなずいてみせる。
「と言うことで、寝ろ」
頼むから、と続けた。
「何なら、添い寝してやるから」
もちろん、この一言は冗談だ。
「兄さん!」
「それこそ、ラウ兄さんのイヤミ攻撃ですよ?」
フォローはしませんからね、とカガリが言う。
「冗談だって。しかし、カガリはかわいげが薄れたな……カナードの悪影響か?」
こう言いながらもムウは彼女たちの背中をそっと押す。
「ともかく、ベッドに横になれ」
このセリフに、三人は小さくうなずいて見せた。