星々の輝きを君に

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 レセップスもまた、地球軍と接触していた。
「……多いな」
 予想以上に、とバルトフェルドは呟く。
「しかし、MSはいない……と言うことは主力はあちらだったか」
 少し残念かもしれない。だが、これも運だ。
「まぁ、こいつらをこちらに引きつけておけば、あちらに増援が行くことはないか」
 それでも、少し残念だ……と呟いてしまう。
「男らしくないわよ、アンディ」
 あきれたようなアイシャの声が彼の耳朶を打つ。
「わかっているけどね。やっぱり、手柄はほしいだろう?」
 そうすれば、あれこれと発言力が増したはずだ。
「無理を通すのも楽になるしね」
 いろいろと、と彼は言った。
「お姫様方のこととかね」
「それなら、別にクルーゼ隊長でもいいでしょう?」
 違うの? と聞き返される。
「……俺にだってプライド、と言うものはあるんだけどね」
 それなりに、とため息をつく。
「でも、あなたは手柄にとらわれるようなつまらない男じゃないでしょ?」
 違うの? と言われて苦笑しか返せない。
「と言うことで、とりあえず目の前の連中で憂さ晴らしをしようか」
 つきあわされる彼らには申し訳ないが。そう、心にもないことを言ってみる。
「そうね。あいつらを片付けないと、キラちゃん達が安心できないものね」
 つきあうわ、と彼女もうなずいた。
「ダコスタ君」
「はい。こちらはお任せください」
 バルトフェルドの呼びかけに彼はすぐに言葉を返してくる。
「お客さん達の安全も気をつけます」
 この言葉に、バルトフェルドは微笑むとうなずいて見せた。

 子供達は無事だろうか。
 そう考えると自然と表情が曇ってしまう。
「……ウズミ様……」
 彼の背中に向かって、そっと声がかけられる。
「大丈夫だ。彼らがそろっている以上、あの二人に被害が及ぶことはあるまい」
 言葉とともに振り向く。そこにはハルマとカリダが不安そうな表情で立っていた。
「そうだな」
 彼らを安心させようというのか。ロンド・ミナも口を開く。
「愚弟も行っている。あれでもサハクの当主代行だ。それなりの対処がとれよう」
 何よりも、と彼女は続けた。
「あれはカガリとキラをかわいがっている。意地でも守るであろうよ」
 己自身の矜持にかけて、と告げる言葉に偽りはないだろう。
「……もちろん、それを当てにしていかせたのだが」
 問題があるとすれば、二人かわいさに彼が暴走することだろうか。
「それこそ、大丈夫だろう。今は年長組も合流しているそうだし」
 カナードの言葉はともかく、彼らの言葉には耳を貸すだろう、とウズミは続ける。
「そうだな」
 いくらギナでもそのくらいの分別は持っているだろう、とミナもうなずく。
「後は、あの子達が戻ってきたときに何をしてやれるか、だな」
 小さな笑いとともに彼女は口にした。
「キラの場合、この国を離れてしまう可能性もある。それを少しでも伸ばす方策を考える必要もあるな」
 せっかくなのだから、少しでも長く手元に置いておきたい、とまで彼女は言う。
「……それは二人のセリフだと思うぞ」
「そう言うな、ウズミ。ここ数年、ゆっくりと話をすることもできなかったのだぞ? 多少はいいではないか」
 これならば、自分が彼女たちを迎えに行くべきだったか。真顔でそう口にする彼女に、ウズミは苦笑を浮かべるしかできなかった。


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最遊釈厄伝