星々の輝きを君に
128
「あぁ、ちょうどよかった。今、呼びに行こうと思っていたところだ」
彼の顔を見た瞬間、バルトフェルドはそう言って笑う。
「彼が情報を流してくれるおかげで、こちらは準備を整えることができたよ」
すぐにでも出撃できるが、と付け加えると視線を移動させた。
「……それはかまわないが、俺はどう考えても足手まといにしかならないだろう?」
何故、自分に言うのか。言外にそう問いかける。ザフトの指揮官、と言う意味であればラウもいるだろう。それなのに、と続ける。
「何。俺としては君の戦闘経験に敬意を払っているだけだよ」
ついでにラウよりも話がしやすい、とバルトフェルドは笑う。
「クルーゼ隊長の、あの、裏で何か画策しているのではないか、と言う雰囲気がどうも苦手でね」
理由はわかったが、と彼は続ける。
「あれでもかわいげはあるんだけどな」
「そう言えるのは君だけだと思うが?」
ムウの言葉に即座に彼は反論してきた。
「いや……たぶん、キラとロンド・ミナも同じセリフを口にすると思うぞ」
カナードは心の中で考えるだけだろう。ギナは笑ってごまかすような気がする。そう続けた瞬間、バルトフェルドが複雑な表情を作る。
「女性陣はさすがだ、と言うべきなのだろうね」
アイシャも含めて、と彼はため息をつく。
「俺ならば、とても言えないセリフだよ」
まぁ、普通ならばそうだろう……とムウも同意をする。
「ともかく、だ。話を元に戻すが」
苦笑とともにバルトフェルドは口を開く。
「君には主にお姫様達の護衛を頼みたいんだよ。状況によっては、アイシャも戦場に出るだろうしね」
そのときに、あの三人のすぐそばにいられる人間が必要だろう。
「まぁ、あの三人をつれて逃げるぐらいはできると思うがな」
そして、キラとカガリはおとなしく自分の言葉を聞き入れてくれるだろうが、と ムウはため息をつく。
果たして、最後の一人はどうだろうか。
「そんなことにはならないよう、努力はするつもりだが」
戦場では何があるかわからない。まして、自軍の中に不確定要素がある以上は、とバルトフェルドは顔をしかめた。
それが誰のことを指しているのか、わからないはずがない。
「まだ、だめか、あれは」
せっかく、ラクスにも足を運んでもらったのに……と言外に付け加える。
「と言うよりも、薬が効きすぎたようだよ」
なにやらぶつぶつと呟きながら壁と友達をしているらしい。
「……本当、怖いお姫様だ」
いくらあの二人もついて行ったとはいえ、今まで何をしても効き目がなかったアスランを落ち込ませるとは……とムウは別の意味で感心する。
「見た目はキラ達に負けないくらい、かわいらしいのに……中身はラウかよ」
はっきり言って、敵に回したくない。
その上、開き直ったあの二人の援護射撃もあったに決まっている。ギナですら同席を拒むような状況だったのは想像に難くない。
「それでも、普段はそこまで本性を出していないようだよ」
歌姫としての顔があるからね、と彼は言う。できれば、自分も本性は知らないままでいたかった……とも彼は続けた。
「まぁ、逆に言えば、彼女が将来、プラントのトップに立ってくれれば安泰だとも言えるけどね」
それで差し引きゼロ、と言うことにしておこう……と彼は笑う。
「と言うわけで、俺としては彼女には無事でいてほしい。もちろん、君のところの二人にもね」
女の子はちゃんと幸せになってもらわないと。その言葉にムウは無条件で同意をする。
「確かに。と言うことで、お前にもがんばってもらわないとな」
そう言いながら視線を向けた先には、イザークの姿があった。
「当然、全力を尽くすつもりです」
即座に言い返してくる彼にとりあえずうなずいてみせる。
「それで、ラウのやつがなんだって?」
彼をよこしたのは、当然、あの弟だろう。そう考えて問いかける。
「作戦に関して、確認させていただきたいことがあるそうです」
ご足労願えますか? と言われて『だめだ』と言えるものがいるだろうか。
「当然だろうね」
こちらもいろいろと話し合っておかなければいけないだろうし、とバルトフェルドもうなずく。
「と言うことで、行こうか」
「……仕方がないな」
言葉とともに、彼らは行動を開始した。