星々の輝きを君に
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静かにソウキスが歩み寄ってくる。
「少し、よろしいでしょうか」
その表情から何を考えているのかを読み取ることはできない。だが、少し焦っているような気がするのは錯覚だろうか。
「ギナから、何か?」
ムウは即座にそう聞き返す。
「……地球軍が上陸したそうです」
静かな声で彼はそう告げた。
「詳しいデーターはあちらから逐次送られてきています。勝手とは思いましたが、ザフトの方にもお渡ししておきました」
「あぁ、それはかまわん」
むしろ、そうしてくれた方が話が早い……とムウは言い返した。
「こうなると、ラウ達がさっさとあれを何とかしてくれていることを祈るしかないな」
でなければ安心して出かけられない。彼はそうも付け加える。
「確かに」
アスランを野放しにしなければいけなくなる。そうなれば、何をしてくれるかわからない……とカガリもうなずく。
「それに、不本意だが、ユウナもいるしな」
あれも馬鹿ではない。混乱に乗じて動くかもしれないから、とカガリはいやそうな表情で付け加えた。
「やっぱり、腕の一本でも折っておくか」
それとも足か、と彼女は真顔で言う。
「カガリ。お前は自分が一応女だ、と言うことを忘れるんじゃない」
そういう物騒なセリフはカナードに任せておけ……というのは違うような気がする。それでも、そう言っておくべきなのだろうか。
「それに……最悪の場合、あいつはここに放置して、キラを連れて行くという選択もある」
その方が安全かもしれない、とムウは言った。
「もっとも、ラウ達と相談してからの話だが」
アスランもいるしな、と彼は続ける。
「……それでも、アスランの方が対処しやすいかもしれませんよ」
ディアッカがこめかみをもみながら言った。
「こっちには他にミゲルとニコルがいます。要は、あいつの居場所をつかんでおけばいいだけですし」
「でなければ、ラクス嬢と一緒にジブラルタルに移動してもらうか、ですね」
もっとも、それも危険を伴うだろうが……とイザークは言う。
「そうだな。すでに連中は近くまで来ている。下手に移動しない方がいい」
それは彼らも同じだが、とムウは口にした。
「地球軍の捕虜なら、すでに移動しているからいいとしても、だ。ギナも殺しても死なないだろうが……カガリとキラはそう言うわけにはいかないからな」
まぁ、どちらにしろ、自分たちだけで決めるわけにはいかない。だから、相談してこないといけないだろう。そう言うと、ムウは腰を上げる。
「悪いが、二人を頼むぞ」
イザークとディアッカに向かってそう声をかけた。
「お前はつきあえ」
ソウキスに視線を向けると命じる。
「はい」
彼の返事を確認すると歩き出す。
「アスランよりも、今は地球軍だからな」
特に、あれが一緒に行動をしているとなれば、なおさらだ。
彼らにはまだ教えていない理由。
それがあるからこそ、キラは連中に狙われる。そして、それを連中に奪われてしまえば、ソウキス達のような存在が増えることになってしまう。
それを一番望んでいなかったのは、あの誰よりも優しかった女性だ。
カナードはともかく、自分とラウは彼女がいなければこの世界に存在し続けることは難しかっただろう。
だから彼女の願いを叶えることも、その面差しを色濃く受け継いでいるキラを守ることも、自分たちにとっては当然のことだ。
ギナ達がつきあってくれるのも、やはり彼女の存在が大きいに決まっている。
「きっちりと片をつけられればいいんだが」
小さな声でそう呟く。
「つけられても、意地でもつけるだけか」
それしかないだろうな。そう言うと同時にムウは表情を引き締める。そのまま、まっすぐにバルトフェルドの執務室へと足を向けた。