星々の輝きを君に
119
ラウとともにみんながいるという部屋へと顔を出す。
「……ちょうどいいタイミングだったようだな」
そのときだ、背後から声が響いてくる。
「カナード兄さん?」
「茶の支度をしてきた。まずは一服しろ。話はそれからだ」
その言葉とともに彼はまっすぐにキラに歩み寄ってきた。そして、ぽんっと頭をたたいてくる。
「それがいいね」
ラウもそう言ってうなずく。
「ところで、お客様は?」
ふっと思い出したというように彼は問いかける。だが、その声音には楽しげな色が見え隠れしていた。
「……俺たちはなれていましたから、別に。他のメンバーは逃げ出したがっていましたが」
まだ、本性を出していないと思うのですが……とカナードは言い返す。
「だろうね」
それにラウは当然というようにうなずいてみせる。
いったいどのような人物なのだろう。
ひょっとして、ものすごく怖い相手なのか。そんな不安がわき上がってくる。
「まぁ、キラの顔を見れば復活するものも多いだろうね」
そう言いながらラウは彼女の背中に手を当てた。
「一生、復活してくれなくていいやつもいますが」
ぼそっとカナードが言葉を漏らす。
「それはそれで困るんですが」
「ディ?」
いたの、と思わず口にしてしまう。
「いたんだよ。まぁ、二人の所為で俺の存在が無視されても仕方がないが」
ついでに、イザークは中にいるぞ…と彼は続ける。
「イザークさんが?」
そういえば、今日はまだ、ゆっくりと話をしていない。しかし、ここにいるなら話をしてもいいのではないか。即座にそんなことを考えてしまう。
「そんな表情をすると、本当にキラも恋する乙女だよな」
かわいい、かわいい……とディアッカが笑いながら口にする。
「ディ!」
何だよ、それ……とキラは言い返す。
「そうだ。キラはいつだってかわいい」
カナードのこの言葉は違うような気がする。でも、彼はあくまでもまじめな表情だ。
「確かに」
さらにラウにも肯定されてしまう。
「と言うことで、入らないと、本気でカガリとギナが切れるね」
そうなった場合、自分では止められない。そう続けられたラウの言葉を誰も否定できない。
「そうだね」
多少は理性を効かせてくれる、と思いたい。だが、相手が相手だけにどうなるかわからない、と言うのも事実だ。
そんなことを考えながらキラはラウとともにドアをくぐった。
「キラ!」
その瞬間、誰かに抱きしめられる。反射的に、それが誰かを確認しようとした。
しかし、目の前に広がっているのはピンクだ。すぐに思い浮かぶ存在はいない。
「ラクス・クライン……キラから離れてくださいませんか?」
本当に誰だろう、と思っていたときだ。イザークの静かな声が耳に届く。
「そうだぞ、ラクス。キラがびっくりしているだろう」
それだけではない。カガリが実力行使に出てきた。
「いいではありませんの。わたくし、さんざん、あなたの自慢話を聞かされましたのよ?」
このくらい、かわいいものではないか。そう彼女は言い返す。
つまり、この状況の遠因はカガリにある、と言うことか。
同時に、二人が口にした名前にも聞き覚えがある。
「……ラクス・クラインって、アスランの婚約者の?」
「そうですわ、キラ様」
キラのつぶやきに、彼女は満面の笑みとともにうなずいて見せた。