星々の輝きを君に
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とりあえずの情報交換は終わったが、逆にやっかいなことになったのではないか。そう思わずにいられない。
「まぁ、厄介事はいったん棚上げにしておけ」
カナードがそう考えてため息をついたときだ。ムウが静かな口調で声をかけてくる。
「あいつがキラを連れてくるそうだからな」
こう付け加えられた瞬間、カナードの中ですべての厄介事が棚上げされた。
「……甘いものは、何があったかな」
とりあえず、彼女にはカロリーと脳の栄養になるものを食べさせないといけない。そう考えながら腰を浮かせる。
「おいおい」
あきれたような声音でムウが言葉を漏らす。
「さすがはカナード兄さん」
あきれているのか、感心しているのか。今ひとつわからない口調でカガリはカガリで言葉を口にする。
「仕方があるまい。あれがカナードだ」
今までここでおとなしくしていただけでも成長したといえるのではないか。ギナはこう言って笑う。
その一言は何なのか。
そう言いたいが、ある意味、二人の兄よりも自分たちのことを見ていた彼に、うかつな反論はできない。
だから、あえて反論をしないことを選択した。
「本当に、皆様、仲がよろしいですわね」
それに対するラクスの感想をどう受け止めればいいのか。これは聞かなかったことにするのがいいだろう、と思う。
「イザーク様。がんばってくださいね」
だが、彼女の矛先は自分ではなく別方向に向いている。だから、放っておこうと決める。
「兄さんはコーヒーでいいのですか?」
話題を変えよう、とこう問いかけた。
「あぁ。ブラックな」
苦笑とともにこう言い換えされる。
「カガリは?」
「コーヒーでいいです」
「私は、アイスにしてくれ」
即座にギナが口を挟んできた。
「はいはい。他にリクエストは?」
こう言えば「自分たちはコーヒーで」とイザーク達は無難な言葉を返してきた。
「……イザークは紅茶の方が好きだっただろう?」
しかし、ディアッカがその言葉を台無しにしてくれる。
「ディアッカ!」
「だって、そうだろう? 後で文句を聞かされる身にもなれ」
あきれたように彼はそう告げた。つまり、そう言うことをしてきたのか。
「……気にするな。キラもラウ兄さんも紅茶派だからな」
一人分ぐらい増えても手間ではない。カナードはそう言う。
「ディアッカ。荷物運びを手伝え」
今回のペナルティーというわけではないが、一番こき使いやすいという理由で彼を指名する。
「了解です」
彼はすぐに言い返してきた。
このメンバーでは自分がこき使われるのは仕方はない、とわかっているのだろう。素直に立ち上がった。
「……俺も、手伝いますか?」
イザークがすかさず問いかけてくる。
「こいつがいるから大丈夫だ。それよりもキラが来たら相手をしてやってくれ」
この言葉に、彼はわかったというようにうなずいて見せた。
比べれば、本当に些細なことだ。
だが、その差が他人に与える影響は大きい。
イザークの言動にアスランが負けているとすればこの点だろう。もっとも、本人はそれに気づこうとはしないのだろうが。
「頼んだぞ」
こう言い残すとカナードはディアッカを引き連れて部屋を出て行く。
ついでに、アスランの様子を確認していくか、と心の中で呟いた。あそこから抜け出せるとは思わないが、万が一、と言う可能性もある。
「あいつのことで、キラをもう悲しませたくないからな」
小さな声でそう呟いた。