星々の輝きを君に
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複雑な経路を一つ一つ追いかけていった結果、たどり着いたのは予想通りの場所、と言っていいのだろうか。
「……アラスカ、ですか」
いやそうな口調でダコスタが言う。
「そうですね」
キラもそう言ってうなずく。
「しかも、これはこのシステムを作られたときから組み込まれたものです」
つまり、同じシステムを使っている基地からは同じようにデーターが流出していると見ていい。彼女はそう続けた。
「そうか」
この一言ともにラウは何かを考え込むような表情を作った。それがどうしてか、キラにもわかる。このシステムを作っている者達の中にブルーコスモス関係者がいると言うことなのだ。
「まぁ、いい。それに関しては後で何とかしよう」
自分たちだけではどうすることもできない。彼はそう告げる。
「……兄さん」
無意識のうちに慣れ親しんだ呼び名が口から出てしまう。
「ご苦労だったね、キラ」
だが、それを起こるどころか逆に微笑みながらラウは髪をなでてくれた。
「……これの対策プログラムなら、すぐにできるけど……」
どうしよう、とその彼を見上げながら問いかける。
「それについても、後で、だ。今はゆっくりと休みなさい」
お客様も来ていることだしね、と彼は続けた。
「お客様?」
いったい誰なのだろうか。
それ以前に、ここに自分を訪ねてくるものがいるとは思えない……とキラは首をかしげる。
「会えばわかるよ」
それ以前に、と彼は笑う。
「お茶の時間だよ。君にちゃんと休む時間を与えないと、私がムウやカナードに責められる」
いったい、どこまで本気で言っているのだろうか。そう思わせる表情で彼は言った。
「イザークともゆっくりと話をしたいだろう?」
そう言われた瞬間、頬が赤くなる。
「兄さん!」
何故、このタイミングでそんなセリフを言うのか。そう思わずにいられない。
「たまにはね。かわいい部下にもご褒美をあげるべきだろう?」
本当に、どこまで本気で言っているのか。そう言いたくなるセリフを彼は平然と口にする。
こういうところは他の二人の兄たちにはできないことではないか、とキラは思う。
「かまわないね?」
ラウは視線をダコスタに向けるとこう言った。
「はい。対処法はわかりましたから、とりあえず信頼できそうなメンバーには流しておきます」
彼らがそれぞれ対策をとれるなら、キラの手を煩わせずにすむだろう。彼はそう言った。
「そう言うことだから、安心して休んでくれていいよ」
小さな笑いとともにダコスタはキラへと視線を向けると言葉を口にする。
「……じゃ、お言葉に甘えて」
そう言うとキラは腰を浮かせた。
「では、こちらだよ」
その彼女の手を取ると、ラウは微笑む。本当に、この無粋な仮面がなければ、もっといいのに。そう思わずにいられない。
兄妹だけの時ならば外してくれるだろうか。
後で聞いてみよう。そう思いながら、キラは彼に寄り添うように移動する。
「とりあえず、部屋を一つ、確保してあるから、安心しなさい」
彼のその言葉にうなずいて見せた。
「急がないと、カガリがふてくされているだろうからね」
そんな彼に笑いながら彼はそう言ってくる。
「……そういえば、どこに行っていたんですか、カガリ」
ギナが一緒だったようだから、心配はいらないと思っていたが……とキラは問いかけた。
「お客様を迎えに、だよ」
即座に彼はそう言い返してくる。これは、相手に会わなければ話が進まないな、とキラは心の中で呟いた。