星々の輝きを君に

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 いったい、キラにどのような秘密があるというのだろうか。
 まさしく簀巻きにされて床に転がされたまま、アスランはそれを考えていた。
 少なくとも、自分が知っていた《キラ》にはそのようなものはなかったはず。自分たちと違うところと言えば、妙に大きな音を怖がったことと、と考えたところでいやなことを思い出してしまう。
「…そういえば、キラは小さい頃、一人で眠れなかったな」
 だから、カナードと同じベッドで寝ていたはず。
 自分がいくら『一緒に寝よう』と言っても、キラはうなずいてくれなかった。
 理由は、自分よりカナードの方が安心できるから、だった。
 その言葉を聞くたびに、自分がどれだけ悔しい思いをしていたか。彼女は知っていたのだろうか。
 自分だって、カナードには負けない。キラを安心させることができる。今でもそう信じているのに、何故、彼女はあそこまで自分を拒絶するのか。
「……そんなこと、許されるわけがないだろう?」
 自分だって、カナードと同じことができる。
 キラだって、それは知っているはずだ。それなのに、どうして彼女はそれを認めてくれないのか。
 今だって、そうだ。
 どうして、彼女は自分を認めてくれないのだろう。
 自分はあの頃よりも強くなった。それなのに、と唇をかむ。
 キラに認められること。
 それが、アスランにとって他の誰に認められるよりも重要なことになっていた。
 それがどうしてなのか。アスラン自身、説明はできなかったが。

「あいつにも困ったもんだな」
 そんな彼のつぶやきはしっかりとムウ達の耳に届いていた。
「しかし、あいつがキラにこだわる理由がお前、だとはな」
 この言葉に、カナードはいやそうに顔をしかめる。
「あいつにライバル視されてもうれしくありません」
 その表情のまま彼はそう言いきった。
「まったく……自分の力量を鑑みろっと言いたいです」
 勝てると思っている方がおかしい、と続ける。
「そう言ってやるなって」
 気持ちはわかるが、とムウは口を開く。
「誰だって、身近にいるやつがライバルになるもんだろう?」
 ラウが自分をそう言う目で見ているように、と彼は続けた。
「……だからといって、俺ですか?」
 他の人間にしろ、とため息をつく。
「兄さん達はいいですよ。実力的にも遜色ありませんし……それにギナ様が入ってもおかしくはない」
 ミナはまた別格だから、と付け加えられて、苦笑を浮かべたくなる。確かに、彼女は別格だ。実力とは別の部分で、である。
「そう言った意味で言えば、最強なのはキラだがな」
 自分たちの中の誰も、彼女には勝てない。そういえば、カナードもうなずいてみせる。
「それは脇に置いといて、だ」
 そのあたりについては、もっと別の時に放せばいい。今、優先すべきなのは別のことだ。
「あいつのお前に対する感情をどうにかしないと、キラへの執着を消すのは無理かもしれないぞ」
 アスランのキラに対する執着は、確かに他のものに対するそれよりも強い。
 だが、それを複雑にしているのは、キラのカナードに対する言動とそれから彼の中に根付いた感情だろう。
 その片方だけを消すのは難しいのではないか。
「まぁ、その原因は、俺たちがお前だけにキラを押しつけたせいだろうがな」
 彼がキラの前に現れたときにはもう、自分たちはそれぞれの場所で足がかりを作るためにあがいていた。だから、直接的にキラを守ってきたのはカナードだと言っていい。
 あのキラのことだ。
 そんな彼に全力で甘えまくったのは目に見えている。
「そのおかげで、俺は戦うだけのものにならずにすみましたよ」
 静かな口調で彼はこう言い返してきた。
「だからこそ、俺はこのポジションを誰にも渡すつもりはありませんよ。キラの隣はあいつに譲ってやったとしても、あいつを最終的に守るのは俺です」
 きっぱりと言い切る彼に、どう言い返せばいいのか。
「……新婚生活だけは邪魔するなよ?」
 こういうのが精一杯だった。


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最遊釈厄伝