星々の輝きを君に
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本音を言えば、待つのは苦手だ。
同時に、必要もなく非戦闘員を危険な場所へと連れ出すのは不本意だと思う。
しかし、だ。
「あの馬鹿が聞く耳を持たないからな」
せめて、自分の考えが絶対ではないと認識してくれれば、多少は楽なのに。
もっとも、彼にそれができているようであればこんなに苦労はしない。
あの男の耳にはキラの言葉すら届いていないのではないか。届いていたとしても、脳内で都合のよい方向へと変換されている。
それでは意味がない。
「あれに比べれば、確かにあいつの方がましだよな」
気に入らないのは事実だが、少なくともイザークは自分たちに歩み寄ろうという姿勢は見える。
それに、イザークはキラの気持ちを優先しようとしているのだ。それよりも何よりも、キラがあの男を好きだと言う。
妥協するしかないではないか。
自分にとって、国のことと同じくらい優先すべきことは彼女の幸せだし……と心の中で呟く。
そのためには、やはりアスランを何とかしなければいけない。
「暗殺できれば簡単なんだが」
さすがに、それはまずいか……と口にする。
「できるなら、とっくにやっている」
そのときだ。背後からこんなセリフが飛んできた。
「私よりもカナードが本気でな」
さすがに、後始末がやっかいだ。だから、選択肢から外した。彼はそう続ける。
「一応、選択肢にあったんだ」
さすがはカナード、とカガリは別の意味で感心してしまう。
同時に、彼らがあきらめた以上、自分もうかつなことはできない、と言うことか。
でも、それでは自分の気が済まない。
何よりも、アスランが自分の非を認めないではないか。
「……ぼこるか」
口ではアスランに勝てない。だから、とカガリが呟いたときだ。
「その前に、わたくしに任せていただけません?」
さらにもう一つの声が耳に届く。
「そのために、わたくしを呼ばれたのでしょう?」
フフ、と笑いながら彼女は続けた。
「悪い」
「気になさらないでくださいませ。わたくしもいい加減、アスランに引導を渡さなければ、と思っておりましたもの」
このままでは最悪の結果になりかねない。その前に、と彼女は続けた。
「それに、最近、ちょっと鬱憤がたまっておりましたの」
いや、そのセリフは違うのではないか。と言うよりも彼女のイメージに合わない。
でも、その気持ちはわかる。
現在のところ、鬱憤をぶつけてもかまわない相手、イコールアスラン・ザラという認識がカガリの中に存在していた。
そして、少なくともいとこ達はそれを認めてくれるだろう。
「とりあえず、詳しい話はあちらに戻ってからでもよかろう」
そうでなければ、車の中でやるがいい。ギナがそう言ってきた。
「そうだな」
確かに、その方がゆっくりと話ができる。そう判断をしてカガリはうなずく。
「私たちが離れている間に、あの馬鹿が何かをしでかしているかもしれないしな」
おとなしくしているとは思えない。そう彼女は続ける。
「否定する気にならんな」
その言葉を、とギナもうなずく。
「本当に、あの人は何をしているのでしょうか」
あきれたくなりますわね、とラクスはため息をつく。
そんな会話をしながら三人はすぐそばで停車している車へと向かう。
しかし、彼らはまだ、アスランがすでにあれこれとやらかしていたとは知らなかった。