星々の輝きを君に
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どこからかの報告を受けていたバルトフェルドの表情が厳しさを増す。
「困ったことになったよ」
そのまま端末をポケットにしまうと、こう言った。
「彼の処分を、と思ったのだが……それよりも先に片付けなければいけないことができた。悪いが、お前にもつきあってもらわないといけない」
まっすぐに視線を向けると、彼はラウに向かって言葉を投げつけてくる。
「それはそれは……やっかいそうですね」
バルトフェルドだけであれば、彼の隊だけの厄介事かもしれない。だが、自分までと言うことであれば、作戦に関わる可能性がある。
最終的に、それはキラの安全に関わることではないか。
かといって、アスランを放置しておく訳にはいかない。
「頼んでかまわないか?」
とりあえず、ムウとカナードに向かってこう問いかける。
「こっちはかまわないが……お前さんの部下も借りていいか?」
万が一のことを考えて、彼は言い返してきた。
「お前たちなら逃がさないだろう?」
なのに何故、と言外に問いかける。
「俺たちだけだと、後々厄介なことになりかねないからな」
何を言われるかわからない。言外にムウはそう言い返してきた。
「そうなると、オーブとプラントの関係が悪化しかねねぇだろう?」
プラントの人間がどちらの言葉を信用するか。それは自明の理ではないか。彼はさらに言葉を重ねる。
「確かに、そうだね」
面倒だが、とラウはうなずく。
「仕方がない。ミゲル、頼んでかまわないかな?」
そのまま、信頼できる部下に向かってこう言った。
「本音を言えば、ニコルもおいていってほしいところですが」
ミゲルは即座にこう言い返してくる。
「ニコル?」
「僕はかまいません」
ラウの問いかけにニコルはすぐにうなずいて見せた。
「では、頼もう」
その瞬間、アスランがほっとしたような表情を作ったのがわかる。
「今、終わらせた方が楽だったろうな」
だが、それを打ち壊すようにカナードが口を開く。
「今なら、ギナ様はいなかったからな」
だが、後に伸びれば彼が戻ってくる可能性は高くなる。
そう言われた瞬間、アスランの表情がこわばった。どうやら、彼の毒舌を思い出したらしい。それを一人に向けられたらどうなるか。それを想像したのではないか。
「自業自得だろう?」
イザークが複雑な口調で声を投げつける。
「ともかく、残りの人間は移動だ」
それ以上彼に口を開かせない方がいい。そう判断をしたのだろう。バルトフェルドがそう告げる。
「確かに。緊急事態ならば、少しでも早く対処をとった方がいい」
ラウもそう言ってうなずいて見せた。
「後で、聞かせてもいい部分だけ教えてくれ」
ムウがそう言って手を振ってみせる。
「確かに。協力できることはしますし」
カナードも同意をするように口を開く。
「それまでの間は、俺の気分転換につきあってもらおうか」
この言葉を耳にした瞬間、ミゲルがいやそうな表情を作った理由は簡単に想像がついた。
「今度は逃がさないように」
だから、活を入れるためにこう告げる。
「わかってます」
そう言いながらも、彼は肩を落としていた。