星々の輝きを君に
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「キラの、トラウマ?」
何なんだ、それは……とアスランが呟く。
それに言葉を返すべきか、それとも……というようにカナードやムウの顔を見つめる。
どうやら、すぐには判断ができないらしい。
彼にしては珍しいな、とイザークは思う。だが、きっと自分の秘密ではないからではないか、とすぐに気づいた。
「そのくらいなら、教えてもかまわないんじゃないか?」
もっとも、とムウが続ける。
「それをキラにぶつけようとするなら、何があろうと俺がそいつを殺すがな」
さらに彼はこう言った。
「その覚悟があるなら、教えてやる」
厳しい視線を向けられて、アスランがかすかに首をすくめる。
「それほどの内容なのかい?」
ムウの厳しい態度にバルトフェルドが問いかけてきた。
「キラには一生知らせたくないな。カガリも同様だ」
本当はカナードにも教えずにすめばよかったのだが、彼の場合、そのときのことを覚えていた。だから、中途半端に覚えていられるよりは正しい情報を与えておいた方がいい。そう判断をして説明をしたが……とムウは言い返した。
「オーブでもそれを知っているのはキラの両親とあいつの兄である俺たちとウズミ様、そしてサハクの双子ぐらいだな」
一部だけはエルスマン夫妻も知っている。しかし、すべてではない。彼はそう続けた。
「タッド様ですら『知らない方がよかった』と言われたくらいだからな」
はっきり言って、重荷だ。
それでも、キラを守るためならば耐えられる。
その言葉に、カナードもうなずいて見せた。
「聞いたとしても、お前は他の誰かに話すことは許されない。特に、お前の父親にはな」
話した瞬間、キラは狙われる。
だから、と同じように彼をにらみつけた。
「お前の父親は、キラが生まれたときから存在を否定してくれたそうだし」
もっとも、自分も同じだそうだが……と彼は続ける。
「それでも、お前があいつの意思を優先してくれるなら妥協しようと思ったんだ」
しかし、アスランは自分の都合だけでキラを振り回した。自分やカリダの制止にも耳を貸さずに、だ。
そんな人間を認められると思うか? とカナードは問いかける。
「話を聞く聞かないを判断する前に、これについての弁明を聞かせてもらおうか」
キラのそばにいたのは自分たちだ。
その話に耳を貸さなかったのはどうしてか。
「決まっているでしょう! 貴方たちが俺たちの邪魔をしたからです」
それ以外の理由はない。
「俺がキラに危害を加えるはずがないでしょう!」
「実際には、キラのトラウマを刺激しまくってくれていたのに、よく言うよ」
吐き捨てるように言い返す。
「こいつに話を聞かせる必要はないですよ、兄さん。それよりも、捨ててきちゃだめですか?」
いっそ、地球軍のど真ん中にでも放置してやりたい。そうも付け加える。
「そうすれば、キラも安心して出歩けるんだ」
アスランがいるから、屋内でも安心できない。
「第一、こいつとキラを会わせたら、間違いなくこいつが犯罪者になります」
既成事実を作ると言って、と告げれば、カナードが何を言いたいのか他のものにもわかったようだ。
その中でもイザークが何かを口走ろうとしている。そんな彼の口をディアッカがふさいだのは、アスランがまだ、キラの《婚約者》が本当は誰なのかを知らないからだろう。
「どうしてもあいつに会いたいというなら、使い物にならなくしてからにさせたいですね」
やってもいいですか? と問いかけてしまう。
「……同じ男としては複雑だがね。気持ちはわかるよ」
しかし、さすがに今はそれは勘弁してや手くれないか? とバルトフェルドが行ってくる。
「そうだね。できれば早々に追い出したいところだが、目の届かないところに行かせては何をしてくれるかわからない。こうなれば、拘束服を着せた上で営巣に戻すしかないだろうね」
その上で、キラとの対面を認めるかどうか、それを決めればいいのではないか。
「もっとも、最優先すべきなのは彼女の精神状態だろうけど」
こう言ってきたのはラウだ。
「もっとも、ここに君の味方はいない。それだけは自覚しておくのだね、アスラン・ザラ」
この言葉に彼が唇をかみしめたのがわかった。