星々の輝きを君に

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「たぶん、これで大丈夫だと思います」
 手を止めるとキラはそう告げる。
 何かのプログラムが生ログを保存していた。その生ログのサイズが大きすぎたために処理能力が落ちて遅くなっていたのだ。
「でも、何だろう。このプログラム」
 妙に引っかかる。
 普通、全部の生ログを保存する必要はない。もちろん、重症患者の生態データーは別だ。
「……キラちゃん?」
 どうかしたの? とアイシャが問いかけてくる。
「これ、トロイの木馬系のプログラムじゃないかと思うんですけど……」
 何故、ここにあるのかがわからない。そう告げる。
「それはなくても動くものなの?」
「今、異常が出ていないのでしたら、大丈夫です」
 少なくとも、自分の手元ではエラー表示がない。だから、大丈夫ではないか。そう続けた。
「どうなの?」
 それに彼女は近くにいた兵士に声をかける。
「異常はありません。むしろ、こちらの方が普通ではないかと」
 つまり、何か余計なプログラムが排除されたから、ではないか。彼はそう続ける。
「そう」
 ということは、と彼女は言葉を綴った。
「ダコスタ君を呼び出した方がいいわね」
 いつ、そんなことが行われたのか、確認する必要がある。もちろん、その目的も、だ。彼女はそう続けた。
「それと……キラちゃん」
「中を確認するのでしたら、すぐにできますが……誰が作ったのかの特定は難しいですよ」
 即座にキラはこう言い返す。
「いいわ。もし、それがどこかに送られていたとするならわかる?」
 アイシャはそう問いかけてきた。
「わかります」
 即座にキラは言い返す。
「ただ、かなり乱暴な手段を使うことになるかもしれませんが」
 相手によっては、と付け加える。
「別にかまわないわよ。責任をとってくれる人間は二人もいるわ」
 アイシャはそう言って笑う。
「ということは、アンディにも報告をしないといけない訳ね」
 面倒だわ、と彼女はため息をつく。
「まぁ、報告はダコスタ君に押しつけるという方法もあるわね」
 それならば、自分はやらなくてすむし……とすぐに考え直したようだ。
「ともかく、プログラムの解析はお願いしていい?」
 アイシャはこう問いかけてくる。
「えぇ」
 キラはうなずくとまたモニターの方へと体の向きを変えた。
「すぐに終わらせますね」
 言葉とともにキーボードをたたき始める。
「オーブが関わっていないといいんだけど」
 セイランがいる以上、否定できないのが悲しい。
 そこまで考えて、キラはあることに気づいた。
「そういえば、ギナ様は?」
 朝から見ていない、とキラはそばに立っているソウキスに問いかける。
「ミナ様から呼び出しがありまして行かれました。終わり次第、戻られるはずです」
 あちらで動きがあったらしい。彼はそう続ける。
「何だろう。兄さん達が知っているならいいけど」
 いやな予感がする、とキラは呟く。同時に、その予感は外れてほしいとも思う。
 しかし、ムウの言うとおり、こういうときの予感だけはやたらと当たるのだ。
「……兄さん達と話をしたいな」
 そうすれば、このいやな予感が消えるかもしれないのに。
 キラは心の中でそう呟く。だが、すぐにその気持ちを振り払うように目の前のプログラムへと意識を集中させた。


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最遊釈厄伝