星々の輝きを君に
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イザークはそのころ、アスランがいた営巣の前にいた。
「……見事だな」
鍵の部分だけを的確に破壊している。しかも、セキュリティに繋がる部分はバイパスを組んですぐには気付かれない用に工作までしていた。
「忌々しいがな」
ミゲルがそう言って頷く。
「本当、これをもっと他の方向へ向けろよ」
まぁ、無理だろうけど……と彼は続けた。そんなことができていれば、アスランがここまでキラにこだわることはなかっただろう。彼はそう続ける。
「っていうか、さ。あいつにとって俺たちって何だったんだろうな」
一緒にいたのに、と続ける。
「さぁ、な」
知らないし、知る気もない……とイザークは思う。
「とりあえず、俺たちはあいつにとって、そこいらにいる置物のような存在だったんだろう」
自分にとって必要ではない存在。
そう定義をしていたのかもしれない。
「俺やディアッカにとってみればどうでもいいことだが、ニコルにはきついかもしれないな」
彼はアスランを尊敬していたし、兄のように思っていたはずだ。それなのに、彼のそんな感情もアスランとっては不要なものだったかもしれない。それを目の当たりにすることになったのだし、と続ける。
「っていうか、怒りを増すだけじゃねぇ?」
人手が足りない、と言うことで引っ張り出されたラスティがため息とともに口にした。
「今回のアスランの一連の言動に切れまくっていたし」
だからといって、自分に当たらないでほしい。彼はそう付け加える。
「しかし、アスランって、あそこまで執念深い性格だったのか、と思うよ」
「だからといって、あいつにキラを渡すつもりはないがな」
彼女が選んでくれたのは自分だ。
そうである以上、他の誰にも何も言わせない。
「そういえば」
イザークのその言葉で何かを思い出したのか。ミゲルが口を開く。
「アスランは彼女の婚約者がロンド・ギナ・サハクだと誤解しているらしいぞ」
「どういうことだ?」
と言うより、どうしてそういうことになったのか。ラスティが即座に問いかけている。
「カナードさんとロンド・ギナ・サハクがあいつの顔を見に行ったときに、彼女が婚約をしたことだけは伝えたらしい。その後は流れで、と言っていたが……」
何でだろうな、とミゲルが首をひねった。
「絶対に、わざとだな」
イザークはそう断言する。
「だろうな」
ミゲルもそれには同意らしい。
「だが、その方がありがたいな、今は」
イザークには悪いが、と彼は苦笑とともに付け加える。
「何が言いたい?」
即座に聞き返す。
「俺もだが、あの人には勝てないだろう?」
勝てるとすればラウかバルトフェルドぐらいではないだろうか。だから、と彼は言葉を重ねる。
「アスランだって、相手を暗殺するなんてことはできないだろう?」
味方同士で殺し合うという状況にはならないのではないか。
「万が一、お前に何かあれば、お姫様は悲しむだろうし」
だから、いいんじゃねぇ? といわれては納得しないわけにはいかない。
「不本意だが、そうだな」
確かに、今、ここで刃傷沙汰などということをするわけにはいかない。しかし、そうなると自分はうかつにキラのそばに近づけない、と言うことか。
「ディアッカをだしにするか」
それは、と彼は口の中だけでつぶやく。
「それよりも、早々にあれを確保すればいいだけのことか」
イザークはそうつぶやく。
「それが難しいんだがな」
それでも、やらなければいけないわけだが……とミゲルは続ける。
「さて、どうするか」
「カガリをおとりにするのは無理だろうし」
さすがに、同じ手に二度は引っかからないだろう。しかし、それを逆手にとれないだろうか。
「ともかく、みんなと相談だな」
身内の恥は身内で何とかしないと、とミゲルはいう。
「本当に馬鹿なやつだよ」
手に入れられないという相手にいつまでもしがみついているなんて、とラスティが言う。
「それしか残っていない、って思うこと自体が間違っているのにな」
そのあたりもしっかりと説教をしてやらないと、と彼はいう。無駄な努力にならなければいいが、とイザークは思いながらもあえて何も言わないことにした。