星々の輝きを君に
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「……これは、気付かれたかもしれないね」
自分の正体に、とラウは口にする。
「まぁ、いずれはばれるんだ。それに関しては仕方がないだろうな」
即座にムウが言い返す。
「それよりも、早々に捕縛のための指示を出したらどうだ?」
あれの、と彼は続ける。
「ここでそれが出来るのはお前だけだろう?」
「確かに」
それはそうだ、とラウも認めるしかない。
万が一、彼が基地のセキュリティシステムを混乱させればどうなるか。考えたくもない。
普段であればあり得ないと一笑に付せる内容も、冷静さを失っている彼ではやりかねないという結論になるのだ。
「キラに会うためなら、なんでもするだろうね、今の彼は」
しかし、とラウは考え込むような表情を作る。
「あれを確保するまでの間、キラをどこに置いておくべきか」
下手なところに置いておけばこちらの裏を書かれかねない。そう彼は続けた。
「虎さんの所に女史とギナと一緒に置いておけば?」
カナードとカガリは捕縛の方に参加したいだろうし、とムウは言う。
「当然。公認でぶん殴れる数少ない機会だからな」
ニヤリ、と笑いながら彼女は頷く。
「……カガリ」
「いいだろう。今回は、あいつがみんなに迷惑をかけているんだ」
そのお仕置きは必要だろう? と彼女はキラに言い返している。
「そうじゃなくて……みんなの迷惑にならないの?」
カガリが参加することで、とキラは首をかしげた。
「……お前、な」
そっちか、と彼女はため息をついてみせる。
「大丈夫だろう。カナードとセットにしておけばいい」
そうすれば、カナードが暴走することはないだろう。そう言ってムウが笑った。
「私はストッパーですか?」
ならないと思うが、とカガリが言い返す。
「足かせにはなるだろう?」
「酷い!」
今の一言は、流石のラウもそう思う。しかし、確かにどのような状況であれカナードの暴走は止めないといけない。
「キラを参加させるわけにいかない以上、黙って足かせになっておけ」
ディアッカですらカナードにとっては足かせになりかねないんだから、と言うムウに『否定できませんけどねぇ』と彼はぼやいている。
「そう言うことだ、カガリ。諦めなさい」
厳しいように聞こえるが、とラウは言う。
「わかってます」
怒ったような口調でカガリが言い返してきた。
「自分が力量不足だ、と言うこともです」
それでも、と彼女は続ける。
「だからといって、アスランには負けませんから」
何故『アスラン』なのかは聞かない方がいいのだろう。
「それで、キラはどこに?」
ディアッカもそれに関してはあえて無視をすることにしたのか。こう問いかけてきた。
「その男をつけてバルトフェルド隊長の執務室に連れて行こう。その後でカナードとロンド・ギナには連絡を入れる」
それまでは、ディアッカがカガリをフォローするように、と続ける。
「仕方がないですね。では、イザーク達にそう言っておきます」
「頼んだよ」
すこしでも早く確保して、今度こそきっちりと引導を渡さなければ、地球軍との戦闘に集中できないに決まっている。
だから、と言外に付け加えれば、ディアッカは頷いて見せた。
「カガリ」
「了解」
にやりと笑いあう二人に、今ひとつ不安を禁じ得ないのは何故なのだろうか。そう思うと同時に、何とかなるだろう……と言う予感もある。
「キラはそれと一緒に付いてきなさい」
まずは、彼女を安全な場所に移動させるのが優先だろう。そして、と考えながらラウは微笑んだ。