星々の輝きを君に
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いったい、彼らは何の話をしているのか。
それ以前に、何故、ラウとキラ達があれほどまでにしたしげなのだろう。彼女が彼に向けている表情はカナードやディアッカに向けているものと同じような気がする。
ひょっとして、自分は何か思い違いをしていたのではないか。
室内の様子を盗み見ながらアスランはそんなことを考えていた。
「……それに、あいつの顔……」
確かに見覚えがある。
だが、どこでだろうか。?
プラントではない。
キラも一緒だったはず。
ということは、月か。
カガリと同じくキラの親戚だったような記憶がある。
「確か、キラにはあと二人、兄さんがいたはず」
確か、二人とも金髪で……と付け加えたときだ。その名前が脳裏に浮かび上がってくる。
「まさか……」
ムウとラウ。
家名を抜かせばよく耳にしていた名前ではないか。特に後者は、と考えた瞬間、頬がひきつる。
「そう言うことか」
つまり、彼らは最初からキラを守るために動いていたと言うことか。その中に、自分の観察もあったのだろう。
だから、彼は自分をキラに近づけようとしなかったのではないか。
「結局、貴方も俺の邪魔するんですね」
いや、最初から邪魔をされていたのだ。
「なら、俺も遠慮はしません」
彼がそう呟くと同時にキラ達の部屋のドアが開く。
「失礼します」
言葉とともに足を踏み入れてきたのはディアッカだ。
「どうかしたのかね?」
当然のようにラウが言葉を返す。
「アスランが脱走したそうです! こちらにはまだ来ていませんか?」
その言葉を耳にした瞬間だ。カガリが立ち上がる。
「ちっ!」
そのまま真っ直ぐに自分がいる窓の方に向かってきた。
「こう言うときだけ野生の勘を働かせるな」
呟きと共に、アスランはとっさに隣の部屋のベランダへとジャンプする。一歩間違えれば地上にたたきつけられない荒技だったが、背に腹は替えられない。
着地すると同時に、床に身を伏せる。
それとほぼ同時に窓が開けられる音が耳に届いた。
「……とりあえず、今はいないな」
カガリが中にいる者達に向かって言葉を告げる。
「しかし、必ず来るぞ、あれは」
というよりも、来ていたのかもしれない。彼女はそう続けた。
「どうして、そう思うの?」
キラが問いかけている。
「そこに足跡らしきものが残っている。あいつ以外に、そんな場所から部屋の中をのぞくような真似をする人間はないだろう」
本当に自分の性格をよくわかってくれている、とあきれたくなる。
しかし、これで迂闊に動けなくなった。
「本当に厄介だな」
キラの回りにいる者達は、と唇を噛む。その中にラウもいるとなると自分一人ではどうしようもないかもしれない。それでも、キラと話をしなければいけないのだ。
「とりあえず、ここから移動か」
あの様子では確実に探しに来るだろう。
ここで掴まるわけにはいかない。
かといって、どこに身を潜めていればいいのか。
「……それについてはあとで考えるか」
今はこの場を離れなければいけない。それも、彼らの目をかいくぐって、だ。
「絶対に、俺はあきらめないからな」
キラ、と呟く。そのまま気配を消して移動を開始した。