星々の輝きを君に
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目の前でムウが食事にも手を伸ばさずに倒れ込んでいる。
「ムウ兄さん、大丈夫?」
今日はカナード達と一緒にMSのテストをしていたはずだが。そう思いながらキラは彼に問いかける。
「とりあえず、死んではいないが……」
きつかった、と彼は言い返してきた。
「ギナとカナードだけならともかく、虎さんも本気だから」
なんでかはわからないけど、と彼は続ける。
「俺がいなくても大丈夫だと思うんだけどな、戦力的には」
さらにこういった。
「だが、お前には二人を守って貰わなければならないからな」
いったいいつの間に来たのだろう。そう言いたくなる絶妙のタイミングでラウが姿を現す。
「……珍しいですね。こちらに来るなんて」
ラウ兄さん、と唇の動きだけで付け加える。
「久々に二人の顔が見たかったからね」
キラとカガリの、と彼は微笑む。
「少しは体重が戻ったかな?」
そう言って、当然のように彼はキラの頬に触れた。
「カガリもさらに強くなったそうだね」
視線を向けると柔らかな笑みを浮かべる。
「ディアッカがショックを受けていたよ」
カガリ相手に本気になった自分に、と彼は続けた。
「それはよかった」
ニヤリ、とカガリは笑う。
「努力した甲斐があったな」
その努力の方向が微妙に間違っているような気がするのは自分だけだろうか。キラはそう思わずにいられない。
「マーナさんに愚痴られる身にもなってよ」
カガリがマナーやダンスの授業からいつも逃げ出す、と自分に言われても困るのだが……とため息をつく。
「僕が傍にいるならともかく、離れているのに、どうしようもないでしょう?」
さらに彼女はこう続けた。
「それに関しては……諦めてくれ」
自分は変わる予定がないから、とカガリは言い返してくる。
「それに……流石にお前が嫁に行ったら、そう言うことはなくなると思うし」
それはどうだろうか。キラは心の中だけでそう呟く。
「まぁ、それに関しては妥協しなさい。カガリも必要があれば覚えるだろうし」
ラウがそう言って笑う。
「どちらにしろ、お前がしっかりとしてくれなければこの子達に負担がいく。だから、さっさと使い物になれ」
今、大変なのは、カナード達のほうだ。ラウはそう言いきる。
「今もシステムの構築で遊んでいるようだが」
その言葉に、キラは首をかしげた。
「やっぱり、僕も手伝った方が……」
「それは却下だよ」
しかし――いや、予想通りと言うべきか――ラウは一言で彼女の言葉を却下してくれる。
「君は絶対に戦争に関わってはいけない。いいね?」
さらにこう付け加えた。
「でなければ、あいつらが何をしてくれるか、わかったものではない。最悪、イザークとの婚約もどうなるか」
今はまだ、大丈夫だ。だが、セイランをはじめとする者達がこぞって邪魔をしてくれればどうなるかわからない。
「まぁ、その時はアメノミハシラにでも逃げるしかないな」
もっとも、とカガリは笑う。
「あいつが大人しくお前を諦めるはずがないだろう? そんな根性なしに、お前を渡すつもりはないから」
それは父親のセリフではないだろうか。
「あぁ、そうだ。今度はあいつと手合わせをしたいな」
許可をください、とカガリはラウへと視線を向ける。
「構わないよ」
あっさりとラウは頷く。それはそれでまた厄介なことになるのではないか。そう思いながらムウへと視線を向ければ、彼もまた同じ事
を考えていたのだろう。苦笑を浮かべているのがわかった。