星々の輝きを君に

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 一番邪魔なのは、やはり彼らだろうか。
 アスランはそう思いながら、目の前を歩いていくソウキスをにらみつける。その視線に気付いたのか。彼が視線を向けてくる。
「本当、邪魔だな」
 監視するような視線に煩わしさを感じて、アスランはこう呟いた。
「あいつらも、あいつらの主も、だ」
 ギナがいたから、キラの婚約話があっさりと決まったのではないか。
 それとも、以前から話が進んでいたのか……と心の中で呟く。
「なら、あいつだって同じ立場だろうが」
 いや、むしろカガリの方が先に婚約をしなければいけないのではないか。彼女の方が複雑な立場だったはずだ。
 それとも、とアスランは考え直す。
 複雑な立場だからこそ後回しにされているのかもしれない。
「どちらにしろ、あいつが邪魔だというのは事実だな」
 その前に、とアスランは心の中で呟く。
「なんとしても、キラと二人だけで話をしないと……」
 そうすれば、まだ、何とかなるのではないか。
「後は、ラクスか」
 彼女が自分との婚約を解消することに同意をしてくれさえすれば、全てはうまくいくのに。そんなことも考えてしまう。
「でも、先に既成事実を作ってしまえばいいだけのことか」
 いくら何でも、キラに子どもが出来てしまえば彼女だって引き下がってくれるのではないか。それこそ、両国間の関係が悪化しかねないし……と呟く。
「まずは、ここからでないと」
 そして、キラと二人だけにならないと……と思う。
「問題は、タイミングか」
 いくら二人きりになれても彼女を危険にさらすのは不本意だ。それでも、それしか選択肢がないのであれば妥協をするしかないのではないか。アスランはそんなことを考えていた。

 目の前で、ディアッカとカガリが本気で組み手をしている。
「どうしてこんなことになったんだ?」
 その光景を見ながら、イザークはキラに問いかけた。
「カガリが暴れたいって……ディとの組み手は子どもの頃からやっているし」
 だから、ディアッカの方も手加減の仕方を知っているはずだ。だから丁度いい、と彼女は言葉を返してくる。
「手加減なんか、してないだろう?」
 あれは、といってきたのはミゲルだ。
「……ちょっと会わない間に、カガリ、また雄々しくなったみたい」
 カナードと一緒にいたせいだろうか、と彼女は首をかしげる。
「多分、あちらでも行動が制限されていたと思うんだよね」
 そうなると、気分転換と称して組み手とかをしていた可能性はある……と続けられた言葉にイザークも頷くしかない。
「しかし、ディアッカの奴、押されてねぇ?」
 なんか、とミゲルが言う。
「押されているのか、それとも、ケガをさせないように気遣っているのか。どちらだろうな」
 微妙だ、とイザークは笑った。
「まぁ、あいつのためには、後者と言うことにしておいた方がいいんだろうな」
 とりあえず、とその表情のまま口にする。
「……そうだな」
 確かに、とミゲルも頷く。
「でも、あれならアスランが一撃でのされた、というのも納得か」
 本当、女性にしておくのはもったいない、と言うのはほめているのだろうか。少し悩む。
「アスラン相手だと、もっとすごいよ、カガリは」
 寸止めしないから、とキラは笑う。
「むしろ、最後まで振り切るのかな?」
 キラにはよくわからないのだろう。だが、イザーク達には彼女が何を言っているのかがわかってしまった。
「本当に害虫扱いだな、あれは」
 もっとも、あれを見ていれば納得するが……とミゲルは言う。
「とりあえず、あいつが馬鹿なことをしないといいんだがな」
 何をするかわからない、と彼は続けた。
「そうだな。俺としても、今、この場であいつと決闘するようなマネは避けたいからな」
 イザークもそう言って頷く。
「そう言えば」
 それで思い出したというようにキラが口を開く。
「なんか、アスラン。僕の婚約者はギナ様だって誤解しているみたいだって、カナード兄さんが言っていた」
 いや、それは誤解したのではなく誤解させたのだ。イザークには彼らが何をしたのか想像付いてしまった。
「ギナ様なら、アスランが襲いかかっても大丈夫だと思うけど……その前に自制してくれないかな」
 彼女はそう続ける。
「後で、ニコルも交えて相談だな」
「あぁ」
 イザークとミゲルは同時に頷いていた。


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最遊釈厄伝