星々の輝きを君に
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アスランの視線が途絶えたところで、カナードはため息をつく。
「まったく……あの思いこみはどこから出てくるんだ?」
キラの希望で何度か説明をしたのに、あれの頭にはまったく残っていないらしい。そのくせ勝手な事ばかり口にしてくれる、と彼は続けた。
「頭の回転が斬れるだけ、ユウナより厄介かもしれぬな」
それに、とギナが続ける。
「あの思いこみの激しさ。パトリックにそっくりだ」
おそらく、オーブとプラントとの会談の時にあったのだろう。彼はこんな言葉も口にする。
「レノアさんと一緒にいた頃は、あそこまで酷くなかったように思えたんですけどね」
そう言えば、キラを監禁したときにはもう、レノアはプラントに戻っていたのではなかったか。
「あるいはレノアさんが抑えていてくださったのかもしれないですね」
アスランの暴走を、とカナードは呟く。
「あのパトリックの妻だったのだ。その可能性はあるな」
もっとも、自分たちにはどうでもいいが……とギナは笑う。
「あれにしてもパトリックにしても、自分が壊れているとは思っていまい。それを自覚できない以上、自制という言葉からは縁遠いな」
自分だからこそ言えるセリフだ、と彼は付け加えた。
「私は、自分が壊れていると知っているからな」
それに関しては、自分も彼のことは言えない……とカナードは思う。
「キラがいますからね、俺には」
そして、カガリも……と言うことで自分も同じだと言外に告げた。
「確かに。ミナとキラがいるから、こちら側にいるようなものだ」
苦笑と共にギナは頷く。
「その基準から言えば、あれは我々には不必要だな」
彼はそう付け加えた。
「本当、ここがオーブであれば簡単だったものを」
何かよからぬことを考えてはいないだろうか。そう言いたくなる表情で彼はそう言った。
「お願いですから、ここでは慎んでください」
ため息とともにカナードは言葉を綴る。
「やるときはラウ兄さんがやると思いますか」
戦闘中のミスを装って撃墜するとかは、と苦笑を浮かべた。
「残念だな、それは」
それこそ、自分がやりたかったのに……とギナは言う。
「キラにばれない自信はあるぞ」
さらに付け加えられた言葉に、カナードは苦笑を浮かべるしかできない。
「まぁ、その鬱憤はあちらで晴らしてください」
これから会いに行くもう一人の、と彼は続けた。
「多少物足りないが、仕方があるまい」
あれならば泣かせても誰も文句は言わないだろう、と彼は頷く。
「ウナトが何を言おうと、知らぬ存ぜぬですませられるだろうしな」
「あるいは、教育的指導ですむのではありませんか?」
小さな笑いと共にカナードは言い返す。
「なるほど。それも口実になるな」
覚えておこう、と彼は頷いた。ひょっとして、まずいことを言ってしまったのか、と一瞬悩む。だが、自分が言わなくてもムウあたりが教えるに決まっている、とすぐに思い直した。
「ならば、遠慮なくやるか」
ニヤリ、と笑う。
「あれだけでも大人しくなれば、あれをキラ達の側に置ける」
そうすれば、自分たちが安心できる……と彼は続けた。
「確かに。あれがどう出るか、わかりませんからね」
本当に、彼の存在は最後までたたる。そう言うしかない。
こうなるとわかっていたならば、月にいたときに全力で排除しておくべきだった。キラのことを考えて多少手心をくわえていたのは失敗だったかもしれない。
「それにしても、面白いように引っかかってくれたものよ」
あれが誤解しているうちに、さらに二人の関係を深めてしまえ。そう言われて、カナードは頷いて見せた。