星々の輝きを君に

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 気に入らない、とアスランは心の中で呟く。
 何故、自分がこんな目に遭わなければいけないのか。確かに、多少の逸脱はあったかもしれないが、許容範囲ないではないか。
「俺は、ただ、キラに会いたかっただけなのに」
 そう呟く。
 しかし、だ。いくら髪の色を変えていたからと言え、カガリをキラと間違えるなんて、自分はいったいどうしてしまったのか。
「確かに、あの二人は昔からよく似ていたが……」
 見分けが付かないほどではなかった。
 しかし、今日は違和感すら覚えていない。間違いなく、あそこにいたのは《キラ》だという確信があった。
 なのに、実は間違っていた。
「焦っていたから、か?」
 可能性は否定できない。
 それでも、今までの自信が揺らいだのは否定できない事実だ。
 その原因が何か。それがわかれば、彼らの言葉が間違っていると反論できるかもしれない。
「……あの人が帰ってくる前に、ここからでないと」
 カナードが戻ってくれば厄介なことになる。
 キラの両親の許可を得られていたのに、彼の一言で覆されたことは一度や二度ではないのだ。
 今回のことも、彼が知れば何を言われるか。
「しかし……いつの間にあいつはキラと合流したんだ?」
 カガリは、とアスランは今更ながらに気が付く。
「あいつは足つきにいたはずだ」
 それなのに、何故……と心の中で呟く。  一番考えられるのは、バルトフェルド隊が足つきを拿捕したと言うことだ。しかし、そんな情報は自分の耳には届いていない。それに、と続ける。
「拿捕した艦で協力をしていた以上、カナードさんだって自由に動ける立場ではないはずだ」
 なのに、話を聞けば彼は自由に出歩いているなどといったものではないらしい。
「ラクスを返してくれた、としてもそれで相殺になるはずがない」
 それとも、別の何かがあるのか? と呟く。
「……俺が知らない何かが、あるのかもしれないが……」
 いったい、それは何なのか。それがわからないうちは、自分は動けないだろう。
「キラ……」
 それでも、とアスランは続ける。
「お前は、俺の傍にいるのが一番いいんだ」
 自分にとっても、彼女にとっても……だ。
 だから、絶対に手に入れる。
 もし、他の誰かを選んでいたとしても、それは間違っているのだと理解させればいい。そう付け加えた。

「本当に始末に負えないな」
 そんな彼の様子はもちろん、監視されていた。
 今は、ムウとバルトフェルドが二人でモニターをのぞき込んでいる。
「しかし、何であそこまであの子に固執するのかね」
 確かに、キラはいいこだが……と彼は問いかけてきた。
「俺は、あいつとはあまり顔を合わせたことはないんだが」
 そう前置きをしてムウは言葉を重ねる。
「あいつが『ザラ』で、周囲にいる連中はその恩恵にあやかろうとしているバカばかりだった、ということだろうな」
 だが、キラは違う。
 というよりも、自分たちにとってそんな家名は珍しくも何でもない。だから、彼女にとってアスランが《アスラン》としての価値しか持たなかったのだ。
「なるほど。彼にはそれが新鮮だったと?」
「鳥の雛が一番最初に見た動くものを親だと思うのと同じだって」
 だからこそ厄介なんだよな、とムウはため息をつく。
「その思い込みをぶち壊すか……でなければ、あいつから確実にキラを守れる人間でなければダメだ、ってことだ」
 そう言った点ではイザークは及第点を与えられる。
「後は、これから次第だな」
 さて、いつ、キラが婚約をしたことをアスランに教えるか。それも問題だな。ムウは呟くように続けた。
「カナードが戻ってきてからの話だが」
「そうだねぇ。彼を仲間はずれにすると怖そうだしね」
「否定はしませんよ」
 にやりとムウは笑うと頷いて見せた。


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最遊釈厄伝