星々の輝きを君に

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 そのころ、キラはラウに与えられた部屋にいた。
「カガリ、大丈夫かな?」
 小さな声で、キラはこう呟く。
「虎さんとラウが行っているから大丈夫だろう。女史も一緒だしな」
 特にアイシャは侮りがたい、とムウが言葉を返す。
「個人的には、カガリの暴走が一番怖いがな」
 カナードならばともかく、ラウでは彼女を止められないのではないか。彼はそう続ける。
「どうしてですか?」
 即座にディアッカが聞き返す。
「あいつはまだ、俺たちとの関係を公にするつもりがないようだから、だよ」
 自分としても、その方がいいだろう、と思うし……とムウは笑う。
「俺がアスランの前に顔を出さないのも、そのせいだしな」
 自分の顔を見れば、彼のことだ。キラのもう一人の《兄》の事を思い出しかねない。その名前から《ラウ・ル・クルーゼ》を連想するのではないか。
「……気付いていない人間もいたがな」
 ぼそっとイザークが呟く。
「それなら、アスランだって同じだろうが……第一、イメージが違いすぎたんだって」
 即座にディアッカはこう言い返す。
「ここにあの人がいないから言うけどな。あの人がキラ達と一緒にいた頃、おやつを作るのはあの人の役目だったんだよ」
 キラの手伝いはともかく、カガリの手伝いという妨害工作にも笑ってフォローしていた、という彼の言葉を耳にした瞬間、イザークは複雑な表情を作る。きっと、想像できないのだろう。
「多分、母さんの次に料理が上手なのはラウ兄さんだよ」
 キラは微笑みと共にこういう。
「僕はもちろん、カナード兄さんもかなわなかった」
 そう続ければ、イザークは複雑な呟きを漏らす。
「今はどうだかわからないぞ」
 ムウが笑いながらキラの頭に手を置く。
「あいつも忙しくて料理なんてしている暇がなかっただろうし……何よりも喰わせる相手がいなかっただろうからな」
 食べてくれる人間がいなければ、どんどん手抜きになるものだ。そう彼は続ける。
「まぁ、お前がねだったら、何か作ってくれるかもしれないがな」
 自分では無理だ、とムウは笑った。
「兄さんが何もしないから、でしょう?」
 即座にキラは言い返す。
「……俺が手を出すとキッチンが悲惨なことになるからな」
 ムウは苦笑を浮かべた。
「カガリも似たようなものかもしれないが」
 それは否定できない、とキラも思う。
「ということだから、俺のことは放っておけ」
 この言葉に、とりあえず頷いてみる。
「ともかく、本番はカナード達が戻ってきてから、だろうな」
 あまり同席したくはないが、と呟くムウにディアッカも頷いて見せた。
「隊長はともかく、カナードさんとカガリだろう? それにアイシャさんも参加するとなると、胃が痛くなりそうだよな」
「でも、あいつの婚約者のお嬢ちゃんがいないだけましかもしれないぞ?」
 彼女の言葉には思わずたじたじになってしまった、とムウは口にする。
「アスランの婚約者って……」
「ラクス・クラインだ。彼女ならそうだろうな」
 キラの言葉にイザークが言葉を返してくれた。
「見た目はキラと似ておっとりしているんだけど……中身はカナードさんのほうが似ているかもしれない」
 二人の説明に、キラはどんな人なのだろうと思う。
「まぁ、詳しいことはカガリに聞け。かなり仲良くしていたぞ」
 彼女であれば飾らない言葉で見たことを教えてくれるはずだ、とキラは小さく頷いてみせる。
「個人的には、ここに彼女にいなくていよかった思いますよ」
 聞いているだけで再起不能になりそうな人間が出てくるから、とディアッカがため息をつく。
「何で?」
「一応、アイドルだからな。ここにもファンは多いと思うぞ」
 彼の答えに、そういうものなのだろうか……と思わずにはいられない。それでも、イザークが真顔で頷いているから真実なのだろう。
「ちょっとあってみたいな」
 だから、キラはこう呟いてみた。


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最遊釈厄伝