星々の輝きを君に
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「やっぱりか」
イザークの話を聞いてムウは苦笑を浮かべる。
「想像通り、と言ってはいけないんだろうがな」
言葉とともに視線を移動させた。その先にはキラがアイシャ達と何かを選んでいる姿がある。おそらく、着換えだろう。
「一応、仲間達には見張っていてくれるように頼んではありますが……」
「アスランだからな」
イザークの言葉の後半をディアッカがため息混じりに補足する。
「それと、隊長ですが……今晩、顔を出すと言っておられました」
こっそりと、とイザークが告げた。
「まだ、みなさんとの関係は公にしない方がいいだろうと」
「だろうな。あちらは隊長さんだし」
自分はとりあえず地球軍からの投稿者扱いだし、とムウは笑う。
「そういや、他の連中がどうなったか、知っているか?」
ふっと思い出したように彼は問いかけてきた。といよりも、本気で今まで忘れていたのだろう。
「既に別の場所に移動したそうです。もっとも、ブリッジクルーと整備の主任だけはここに残って貰っていますが」
営巣ではなく三つ下の階に軟禁している、とディアッカが告げた。
「それなら、貴方がここにいる理由もばれないでしょう、と言うことです」
キラとの関係はもちろん、オーブとの関係も……と彼は言う。
「虎さんにはあれこれと迷惑をかけているようだな」
色々な意味で助かるが、とムウは苦笑を浮かべる。
「気にすることはないと思いますよ。あの人は絶対、楽しんでいますから」
色々な意味で、とイザークは言葉を返す。
「そうね。アンディは強い人間が好きだもの」
いったいいつの間に近づいてきていたのか。アイシャが口を挟んでくる。
「もっとも、一本、筋が通っていない相手はダメよ? そう言う意味でクルーゼ隊長は嫌いだったみたいだけど」
そう言いながら、彼女はキラへと視線を向けた。
「あの子の事があるとわかれば、納得したみたいね」
苦手みたいだけど、排除するほどじゃないと考えているようだわ……と彼女は付け加える。
「それはありがたいね。表だって動くのはあいつになるはずだ」
ニヤリ、とムウは笑う。
「それよりも、なんか用か?」
「この子借りていい? ちょっと意見を聞きたいのよ」
言葉とともにアイシャはイザークの襟首を掴む。
「あぁ、持ってけ」
キラのことだろう? とムウは笑う。
「確かに、それならそいつの意見を聞かないとな」
ディアッカも頷いてみせる。
「ただし、カガリとケンカするなよ?」
さらに彼は付け加えた。
「……あいつが俺の意見に耳を貸せばいいだけだ」
それにイザークはこう言い返す。
「まぁ、カガリだからな」
苦笑と共にディアッカが言ったときだ。誰かがドアを開けようとする音が響く。
もちろん、開くはずがない。ここのセキュリティは他の部屋よりも厳しい。キラとカナードが構築したのだから、それは当然だ。
だから、アイシャ達に用があれば、事前に連絡を入れた上で、端末を使って入室の許可を得なければいけない。自分やディアッカですら、例外ではないのだ。例外といえるバルトフェルドですら、その特権を利用することはほとんどない。
それを知っているから、だろう。バルトフェルド隊の者達は律儀にここに関するルールを守っている。
だが、今ドアの外にいる相手はそうではないらしい。
「ディアッカ……」
「わかっている。ニコルに確認してみる」
イザークが何を心配しているのかわかったのだろう。彼はすぐに頷いて見せた。
「すぐに突破できないとは思うが……」
とりあえず、キラを別の部屋に移動させた方がいいか。そう考えてイザークは立ち上がった。