星々の輝きを君に

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「アスラン達が来るそうだ」
 忌々しそうにカナードが言う。
「って言うか、ラウが来るんだろう?」
 アスランも同行するかもしれないが、とムウがつっこんでくる。それならば、彼が何とかするのではないか。そうも彼は言った。
「そうですが……あれは、間違いなくこちらに押しかけてきます」
 ラウの指示を無視して、とカナードは言い切る。
「宇宙にいたときもそうだったそうですよ」
 ディアッカの話だと、と付け加えた。
「そこまでとは、な」
 想像以上か、とムウはため息をつく。
「だから、カガリ」
 それを無視してカナードは視線を移動させる。
「お前は何があってもキラから離れるな。いいな?」
 彼女を一人にしなければアスランも迂闊な行動を取れないのではないか。ある意味、希望的観測だが、とカナードはため息をつく。
「何をしてもいいんですよね?」
 カガリが目を輝かせながら問いかけてきた。
「殺さない程度ならな」
 殺してしまえば国家間問題になりかねない。だが、ケガ程度なら、いくらでも言い逃れが出来る。
「ナチュラルで女の子だからな」
 常識で考えれば、訓練を受けたコーディネイターがナチュラルの民間人――しかも女の子――にやられるはずがない。やられたとすれば、よっぽど運が悪かったのか、本人が油断していたのではないか、と思われるのがオチだ。
「そう言うことだ」
 自分がしっかりと鍛え上げたという事実を棚に上げてカナードは頷く。
「俺も出来るだけ一緒にいるようにするが……地球軍が動いている以上、必ず傍にいられるとは限らないからな」
「そうだな。それに関しては俺も同じだ」
 自分は地球軍に属していた以上、下手に動かない方がいいだろう。ムウはそう言って笑う。
「ギナがいるから、それなりには動けると思うが……キラのフォローは難しいだろうな」
 だから、と彼もカガリへと視線を向ける。
「お前が頑張れ。ただしやりすぎるな」
 いいな、と続ける彼に、カガリは頷いて見せた。
「当たり前でしょう。あいつは責任持って叩きつぶす」
 二度と、キラを傷つけさせない。そう言うカガリは――言っては何だが――雄々しかった。

 そのころ、キラはイザーク達やギナと共にバルトフェルドの元にいた。
「アスランも?」
 話を聞いた瞬間、思わずこんなセリフが口をでてしまう。
「仕方がないな。あれも、クルーゼ隊の一員だ」
 不本意だが、と呟いたのはディアッカだ。
「大丈夫だ。とりあえず、お前には近づけないよう、気をつける」
 イザークが微笑みながらこう言ってくれた。
 その言葉を信じたい。そうは思うが、どうしても恐怖が抜けきらないのは過去のあれこれを覚えているからだろう。
「カガリ・ユラと一緒にいればいい。ソウキスも一人置いていく」
 ギナがそう言ってキラの髪を撫でてくれた。
「あれも軍人である以上、戦場に行くのは当然だからな」
「そうだな」
 ギナの言葉にバルトフェルドも頷いてみせる。
「珍しくも、クルーゼ隊長と彼が『危険人物だ』と言うことでは同意を見たからね」
 ということで、キラ達の側には近づけないようにすることにした、と彼は言う。
「君達がいる階には彼は立ち入りを禁止しようと思っているが……聞き入れてくれるかね」
 まぁ、命令を無視したときには、それなりのお仕置きが待っているが……と彼は笑う。
「参考に何をする予定か、聞いて構わないかな?」
 カナード達に教えなければいけないから、とギナが楽しげに問いかけた。
「そうだね。とりあえずは営巣に放り込んでおこうか」
 彼と同じ場所でもいいかもしれないね、と続ける。
「……ユウナ・ロマか」
 それはそれで楽しいかもしれないが、とギナは言葉を綴った。
「カガリと勝負させるのもいいかもしれんぞ」
 勝負とはいったい何をさせるつもりなのか。それ以前に、何故カガリなのか、と思わずにはいられない。
「……ギナ様」
 その気持ちのまま、キラは彼に呼びかける。
「カナードでは、あれも己の未熟さを認めぬだろうからな」
 しかし、カガリ相手では屁理屈しか口に出来ないだろう。だから、と彼は笑う。
「でも、カガリは女の子ですよ?」
「……そうは思えない実力の持ち主だがな」
 キラの指摘にディアッカが小さな声でつっこみを入れる。
「だからこそ、いいのだよ」
 女性に負けたと公言できるのか? とギナが笑う。
「確かにねぇ。恋人になら負けてもいいだろうが、そうじゃないなら笑い話にもならない」
 バルトフェルドの言葉も違うような気がする。
「とりあえず、大人しくしておれ」
 自分が手出しをしない方がよいと判断してキラは、問われて小さく頷く。
「いい子だな」
 そんな彼女にギナは笑って見せた。
「それと、もう一つのことだが……とりあえず、内密と言うことにしておいてくれ」
 話は通しておくが、とバルトフェルドが口にする。
「それで十分だ」
 出来る限りのフィードバックはさせて貰おう。ギナのその言葉に、バルトフェルドも唇の端を持ち上げた。


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