星々の輝きを君に
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不本意だが、とラウはため息をつく。
「アスランも連れていかないわけにはいかないだろうね」
できれば置いていきたいのだが、とついつい本音を漏らしてしまう。
「おいていった方が怖いと思いますよ」
そう言ってきたのはミゲルだ。
「何をしでかすか、わかりませんからね」
疲れたような笑みと共に彼はそう続ける。
「連れていっても同じだと思うが?」
むしろ、監視という点では今まで以上に厄介かもしれない。そう続ける。
「ですが……他の隊への被害は減ります」
苦笑と共に彼は言い返す。
「少なくとも、クルーゼ隊の悪名は広がらないかと」
というよりも、アスランの悪名か……と彼は続けた。
「……そう言うことにしておくかね」
その分、自分たちの負担は増えるが、と苦笑と共に付け加える。
「ですが、あちらにはイザークもディアッカもいますし……監視に避ける人数は増えると思いますよ」
「だといいがね」
キラとイザークのことを知られたら、さらに拍車がかかるかもしれない。だが、アスランと一緒にいるよりもイザークとのほうがキラが幸せになれることが目に見えていた。
だから、ここで徹底的に叩きつぶしておかなければいけないだろう。
でなければ、自分がキラと一緒に過ごせる時間を手に入れることは難しくなる。
「……と言うことで、あの二人を呼んできてくれるかね?」
気は進まないが、指示を出さないわけにはいかない。ラウはそう続けた。
「ですね。準備も必要でしょうし」
色々と、とミゲルは頷く。
「任せよう」
その間に、自分は他にすべき事を行う。言外にそう告げれば、彼はそのまま部屋をあとにした。
「さて……彼らに連絡を取っておくか」
とりあえず、カガリにキラから離れないように言っておかなければいけない。その他にもあれこれと話をする必要があるだろう。
「まぁ、ギナがいるからな。アスランも迂闊なことは出来ない、と思いたいね」
だが、安心するのは早い。彼のことだ。人目の付かないところで何とかしようとするに決まっている。既に、一度、実行しているのだ。
「君はキラにふさわしくない。いい加減、その事実を認識して貰いたいものだ」
ラウのこの呟きは彼以外の耳には届かなかった。
「……さて」
そう言いながら、ウズミは視線を移動させた。そこには黒づくめの衣装を身に纏ったミナの姿がある。
「カガリ達を呼び戻さなくていいかね?」
地球軍の目的地にいるが、と彼は問いかけた。
「呼び戻すつもりか?」
ミナが口を開く。
「……オーブのことを考えれば、その方がよいのだろうが……あの子の事を考えればあちらにいた方がいいだろう」
戻ってくれば、間違いなくあの子は拘束される。その後は利用されるだけの日々が待っているのではないか。
それでは、あの子を自分たちに預けてくれた人の願いを違えることになってしまう。
「首長としては間違っているのかもしれないがね」
だが、自分も人の子の親だ。子どもの幸せを願うのは当然のことではないか。ウズミはそう考える。
「何。私もあの子には幸せになって欲しいと思っているから、構わないだろう」
それよりも、とミナは言葉を重ねた。
「内密に、新型兵器のテストをしたいのだが……構わないか?」
バナディーヤあたりで、と言う彼女をウズミは見つめる。
「完成したのかね?」
「二機ほど、な」
そのうち、一機はナチュラル用にしたい……と彼女は続けた。
「幸いなことに、あちらにはギナの他にカナードもいる。OSの開発には問題がないだろう」
つまり、彼らのために必要な武器を送りたいと言うことか。
「……私は聞かなかったことにしておいた方が良さそうだな」
必要なものは使っても構わないが、とウズミは続ける。
「あぁ。好きにさせて貰おう」
楽しみだ、とミナは笑う。そんな彼女たちに任せておけばキラのことは大丈夫だろう。あとは、自分が適当にごまかしておけばいい。オーブもキラも、どちらも守ってみせる。
ウズミは心の中で決意を新たにしていた。