星々の輝きを君に
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ギナがいるからだろうか。
バナディーヤへも地球軍の動きは報告されていた。それも、オーブ軍から、だ。
「さて……目的はどこだろうね」
バルトフェルドが楽しげに問いかけてくる。
「……オーブ、という可能性も否定できぬが……おそらく、ここだろうな」
そう言ったのはギナだ。
「十分あり得ますね」
さらにカナードも頷いている。
「何故、ですか?」
意味がわからない。そんな表情でカガリが問いかけた。脇ではキラも意味がわからないというように首をかしげている。
「ここには現在、首長家の直系が三人もいるからな。それに、キラもいる」
「僕?」
さらに付け加えられた言葉に彼女の目が大きく見開かれた。
「何で? カガリならわかるけど」
彼女が口にした言葉に、イザークの方が首をかしげたくなる。
「何故、そいつならわかるんだ?」
そう言えば、首長家の直系が三人とも言っていた。
つまり、ロンド・ギナ・サハクとユウナ・ロマ・セイランの他に後一人いると言うことになる。
キラ達兄弟ではない以上、該当の人物は一人しかいない。だからそれに関しては――多少引っかかるものは覚えるが――いいのではないか。
だが、と思いながら視線を向ける。
「お前は、アスハか?」
キラとディアッカのいとこということは、一番可能性が高いのはウズミ・ナラ・アスハの血縁ではないか。そう考えて問いかける。
「頭の働きもいいようだな」
ニヤリ、と笑いながらカガリは頷く。
「私はカガリ・ユラ・アスハだ。ウズミ・ナラ・アスハの娘、だな?」
「何故、疑問形なんだ?」
思わずこうつっこんでしまう。
「息子じゃないだろう、お前は」
付いてないし、とため息とともにムウが言った。
「キラと一緒で女の子だろうが。性格と技量はともかく」
いくら本人に不満があろうとも、それに関してはどうしようもないことだ。そう彼は続ける。
「わかっていますけどね」
でも、時々歯がゆくなるのだ、と彼女は言う。
「私が男なら、ユウナをキラに近づけずにすんだのに……と思うだけです」
ついでに、あいつに渡すこともなかったのではないか。彼女はそう続けた。
「……それは無理だな」
ため息とともにカナードが言う。
「たとえお前が男でも、キラと結婚はもちろん、婚約も出来ない。血が近すぎるからな」
ディアッカですら難色を示されたのに、とカナードが指摘した。
「わかっていますけどね……でも、せめてオーブの誰かなら……」
「それこそ、セイランが邪魔するな」
だから問題なんだろうが、とラウは言う。
「……いとこ同士の結婚は禁じられているのか?」
つまり、とイザークはディアッカに問いかける。
「らしいぞ」
よく知らないが、と彼は言い返してきた。
「オーブという国が出来る前に、近親婚が続いたせいで弊害が出てきたから、だって」
だから、明確に禁止されているわけではないが、あまりいい顔はされないだけ。キラがそう教えてくれる。
「でも、僕とディなら二人ともコーディネイターだからという話はあったよ」
カナード達が『保留』といったから、話だけで終わったけど……とキラは続けた。
「あぁ、それでか」
ディアッカも頷いてみせる。
「俺としては、あの人達の許可をもらえる人間がでるとは思わなかったよ」
さらに彼はそう言って笑った。
「カナード兄さん、イザークさん、気に入っているから」
ラウもそうなの? と彼女はディアッカに問いかけている。
「だと思うけどな」
キラが見たとおりだ、と彼は言い返す。自分の頭越しにこんな会話をされるのは本人としては遠慮したい。だが、このポジションが普通になってきたような気がするのもまた事実だった。
地球軍の動きが伝えられたのはそれからすぐのことだった。