星々の輝きを君に
79
「カガリ」
彼女たちの顔を見た瞬間、キラが口を開く。
「イザークさんに何かした?」
きっぱりとそう言いきったのは、付き合いの長さ故、というべきなのだろうか。
「何かって……」
言葉とともにカガリが視線を彷徨わせ始める。
「とりあえず、挨拶ぐらいだぞ」
そのまま彼女はこういった。
「なんか、やったんだ」
即座にキラがそうつっこむ。
「兄さん?」
そのまま、彼女は視線を移動させた。おそらく、彼らが真実を知っていると判断してのことだろう。
しかし、彼らの方が一枚上手だ。適当な微笑みと共に見事にしらを切り通している。その表情から彼らに問いかけても無駄だと思ったのだろう。
「ディ?」
今度はディアッカへと矛先を変えた。
「……普通はおじさんがすること、だな」
あれは、と彼は口にする。
「ちょっ、ディ!」
「この場合、俺が優先するのはキラとイザークだろう?」
どう考えても、イザークはアウェイなんだし、と彼は笑った。だから、無条件でイザークの味方をする、と続ける。
「他の状況であれば、いとこのよしみでお前の味方をするがな」
そう言って、彼は笑った。
「まぁ、妥当なところだな」
彼の言葉にムウも頷く。
「……ともかく、カガリ」
低い声でキラが彼女に呼びかける。
「余計なことはしないで。僕が僕の意志で選択したことだし、父さんの権利なら、それは父さんがすべき事だもの」
たとえ血のつながりがあったとしてもカガリは当事者ではない。だから余計なことをするな……と彼女は言い切った。
「だけどな、キラ」
「いいわけはしないで! でないと、おじさまにあれこれ報告するよ?」
そうしたら、きっと、外出禁止になるだろうね……とまで言われるような内容とは何なのか。
「それは是非とも聞きたいな」
今まで黙って聞いていたギナがそう言って笑う。
「それはやめてくれ!」
困る! とカガリが叫ぶ。
「なら、もう余計なことはしないで」
いい? という彼女に、カガリは渋々と頷いてみせる。
「まぁ、代わりにアスランが来るんだ。それで鬱憤でも晴らせ」
にやりと笑いながらディアッカが言った。その瞬間、キラの表情が強ばる。
「ディアッカ!」
バカ、と反射的にイザークは彼の脚を蹴飛ばしていた。
「悪い」
彼にしても、キラがここまで顕著な反応を見せるとは思っていなかったのか。しまったという表情を作っている。
「だが、それは真実だ。いつまでも逃げているわけにはいかないだろう?」
カナードが冷静な口調でことはをかけてきた。
「そうだな。さっさと片を付けてしまった方がいい」
でないと、ゆっくりと過ごせないだろうからな……とムウも頷いてみせる。
「ラウの野郎も戻ってくるんだ。久々の水入らずの時間をバカに邪魔されるのは不本意だからな」
だから、しっかりと引導を渡してやれ……と彼は続けた。
「頑張れ」
カナードもそう言って笑う。
「いざとなれば、カガリを前面に出せばいい。あいつも無視は出来ないだろうからな」
さらに付け加えられた言葉に苦笑しか浮かんでこない。
「そうだな。あれならば殴っても困らないか。ラクスも文句は言わないだろうし」
カガリもこう言って頷く。
「……それはなんか違うと思うけど……」
「でも、昔からだろう? こいつらの仲の悪さは」
キラの言葉にディアッカがこう言い返す。
「そうなんだけどね」
でも、本当にいいのか……とキラは首をかしげる。
「いいと言うことにしておけ。そいつならアスランに負けない」
苦笑と共にイザークが言う。
「あいつにしても、ナチュラルの女性に負けたとなれば恥だからな。公言できないだろう」
相手が規格外だったとしても、と続ける。
「お前、何が言いたい?」
「自分がしたことを思い出せばわかるだろう?」
カガリの問いかけに、イザークはこう言い返す。
「本当に、いったい何をしたの、カガリ?」
それがキラの怒りを再燃させたのは失敗だったかもしれない。イザークもそれだけは認めざるを得なかった。