星々の輝きを君に

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 そこに足を踏み入れると同時に何かが空を切った。
 反射的にイザークは身を沈める。そうすれば、先ほどまで自分の頭があった場所を誰かの拳が通り過ぎていくのがわかった。
「何故、避ける!」
 次の瞬間、怒声が耳に届く。
「普通避けるって」
 それに言い返したのはイザークではなくディアッカの方だった。
「黙ってろ、ディ!」
 お前も同罪だ! と声の主は続ける。
「それはないだろう、カガリ」
 ため息とともに彼は言い返す。
「俺だって、カナード兄さん達が許可を出さなければ邪魔してたって」
 実際、アスランに関しては徹底的に邪魔しているだろうが……と彼は続ける。今回この事だって、アスランの一件がなければ、ここまで焦って事を進めなかった。彼はそうも付け加える。
 その言葉に苦笑を浮かべたのがイザークだけではなかった事が幸いなのだろうか。
「とりあえず、ラウだけではなくギナも認めたんだ。あきらめろ」
 こう言ってきたのは三人の中で一番年長の人物だ。彼が身に纏っているのが地球軍の軍服だというのが少し気にかかる。しかし、すぐにあることを思いだした。
「貴方がエンデュミオンの鷹ですか?」
 イザークはこう問いかける。
「キラから聞いていたのか?」
 面白そうな声音で彼は聞き返してきた。
「自慢と一緒に、です」
 というよりも、彼女の場合、カナードを含めた兄たちの話は自慢と同意語だ。心の中でそう付け加える。
「それをお前さんは黙って聞いていると」
「聞いていて楽しいですから」
 キラの表情がくるくる変わるのを見ているのが、と小さな声で続けた。
「なるほど。ラウの判断は間違ってなかった、と」
 ニヤリ、と彼は笑う。
「ということだ、カガリ。妥協しろ」
 そのまま視線を移動させると彼はこういった。同じように視線を向ければ、どこかキラに似ている少女の姿が確認できる。しかし、彼女が身に纏っている空気は女性とは縁遠いものだったが。
「妥協はしますよ。キラが受け入れたんなら」
 でも、とカガリは続ける。
「一発、ぶん殴らないと、私の気が済まないんです」
 そう言う問題なのか。そう問いかける間もなく彼女はまた拳を振り上げてくる。
「……カガリ。顔だけはやめておけ。キラに気付かれるぞ」
 冷静な口調でカナードが口を挟んできた。
「わかってます!」
 だから、本当にそう言う問題なのか。そう考えながらも、イザークは彼女の拳を避ける。
 しかし、それは陽動だったらしい。
 次の瞬間、腹部に衝撃を感じた。それに倒れなかった自分をほめていいだろうか。そう思わせるほど重いものだった。
「……こらえたか」
 忌々しそうに彼女が言う。
「ったく……本当に気に入らない……」
 そう言うところも、と彼女は続けた。
「カガリ」
「だってそうじゃないですか! これで倒れていればバカに出来たのに」
 それも出来ない、とカガリは唇をとがらせる。
「そこまでにしておけって」
 大丈夫か? と付け加えながら、ディアッカが顔をのぞき込んできた。
「とりあえずは、な」
 顔をしかめながらイザークは言い返す。
「しかし、本当にそいつは女なのか?」
 悔し紛れにこう問いかける。
「一応、女だと思うぞ……実力はみての通りだ」
 まぁ、カナード達がよってたかってたたき込んだ結果らしい……とディアッカは苦笑と共に言う。
「これがキラじゃなくてよかったけどな」
「……否定はしない」
 思わずこう言ってしまう。
「ともかく、お前が何とかごまかせるようになったらキラの所に行くか」
「……わかった」
 もう少し別の事を言え、とも思う。しかし、これが彼なりの気遣いなのだと言うことも長い付き合いでわかっている。だから、息を吐き出すと共に同意の言葉を口にするしかなかった。


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最遊釈厄伝