星々の輝きを君に
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こんなに早く婚約が整うとは思わなかった。
あるいは、事前に既に根回しが終わっていたのか。
「プラントだけならばあり得るな」
誰よりもそれを望んでいたのはエザリアだ。前回のメールを目にしてから即座に彼女が動いていたとしてもおかしくはないだろう。
何よりも、彼女はキラを《嫁》にしたがっていた。だから、暴走してくれたのではないか、と不安もわき上がってくる。
しかし、今回は、それがありがたい。
「オーブの方はギナ様がいてくださるから大丈夫だろう」
それにカナード達か。
「とりあえず、カナードさん達を迎えに行ってキラに会わせないといけないな」
そのためにはバルトフェルドの許可をもらわないといけないだろう。
「ディアッカも誘うか」
キラの側にはソウキスがいる。だから、自分たちが着いていなくても大丈夫ではないか。それに、ここで彼が動かなければ、それはそれで問題だろう。
「殴られるだけですまないだろうしな」
このような場に顔を見せなければ、とイザークは苦笑と共に付け加える。
「さて……キラの所にいればいいんだが」
そう言いながら彼が歩き出したときだ。
「イザーク」
探していた当人が表情を強ばらせながら駆け寄ってくる。
「どうした?」
何かあったのか、と即座に問いかけた。
「……隊長達がジブラルタルに着いたらしいんだが……早速アスランがやらかしたらしい」
何を、といわれなくても想像が付いてしまう。
しかし、着いて早々それなのか。
もちろん、理由は《キラ》に決まっている。
「厄介だな」
アスランのその執着は、とイザークは言う。
「だよな」
ディアッカも頷いてみせる。
「というわけで、あの人達を迎えに行くか」
少しでも体勢を万全にしないと、と呟く彼にイザークは苦笑を浮かべた。
「俺も今、それをお前に提案しようと思っていたところだ」
そのままこう告げる。
「そうか」
じゃ、急ぎますか。そう言って笑ったディアッカと共にイザークは歩き出した。
苛立ちを押さえきれない。
「何故、邪魔をされなければいけないんだ?」
この言葉とともに壁に拳をたたきつける。
「地球に来れば、すぐにキラに会いに行けると思ったのに」
しかし、何故か許可が出ない。それどころかこの基地で待機を命じられてしまった。
それは一体どうしてなのか。
「あの地には何かあるのか?」
それとも別の理由があるのか、と彼は呟く。
「どちらにしろ、俺とキラの再会を邪魔してくれていることには変わりないが……」
気に入らない、と思う。
「ひょっとして、貴方の差し金ですか?」
ふっと思いついたのは自分の婚約者である少女だ。彼女であれば、ザフトにもそれなりの影響力を持っていたとしてもおかしくはない。
だが、とすぐに思い直す。
いくら彼女でも作戦に関わることまでは口出しできないはず。ならば、他の誰か、ということだろう。
では、いったい誰なのか。
「何故、俺とキラを引き離そうとするんだ?」
自分たちは一緒にいるのが普通なのに。そうでなければいけないんだ。
なのに、誰も自分の味方をしてくれない。
今だって、こうして《命令》という強制で自分をこの地に縛り付けているではないか。
他のことであれば無視しても構わない。
だが、これは従わなければいけないものだ。それがわかっていても、納得できない。
「……キラ」
何としても会いに行くから。アスランはそう呟く。
そんな自分の様子を見ていた者がいたと、彼は気付いていなかった。