星々の輝きを君に
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キラが『恋愛感情かどうか、自信がないけど……』といいながらも頷いてくれた。
それはきっと、こいつが骨を折ってくれたからではないだろうか。
「悪かったな」
そう考えながら、イザークはディアッカに言葉をかける。
「気にするなって。見ていて歯がゆかったから、背中を押しただけだし」
キラのために、と彼は言い返してきた。
「あいつが関わってなきゃ、適当に応援して終わる予定だったがな」
さらにこう付け加えられて、イザークは憮然とした表情になる。
「ディアッカ」
そのまま、低い声で相手の名を呼んだ。
「仕方ないだろう。お前とキラなら、優先順位はキラの方が高い」
そう言われてあっさりと納得してしまった自分がいることを不思議に思わない自分がいる。その事実にイザークは気が付いていた。
何よりも、そう言われても腹も立たない。
「わかってはいたがな」
キラに関わる者達はみんなそうだ。だから、とため息混じりに言い返す。
「俺なんて可愛い方だと思っているけど?」
からかうような声音でディアッカはそう言ってくる。
「それも想像が付いているが……それとこれとは別問題だろうが」
「そうか?」
「そうだろう」
友人の結婚問題だろうが、とイザークは言う。
「だからだよ。あくまでも他人事じゃん」
友人とは付き合っていっても、その嫁と付き合うわけじゃないし……と彼は笑った。
「……そう言うことか」
とりあえず納得をするしかない。もちろん、無条件に納得しているわけではないが。
「まぁ、キラが不幸にならないようにしっかりと介入させてもらう予定だけどさ」
しかし、これにはため息しか出てこない。彼がこうであれば、他の面々はどうなのだろうか。考えるだけで怖い。
「ともかく、母上には連絡を入れておくか」
気持ちを変えるようにイザークはこういった。
「そうだな。俺も親父に連絡を入れるわ。そうすれば、あいつも文句を言えなくなるだろうし」
正式に決まってしまえば、いくらアスランでも口を挟んでこられないはずだ。そう言われても、頷けないのは、あの時の彼の表情を見てしまったからだろうか。
キラに対する執着。
それがどれだけ強いものか、当事者ではない以上、想像するしかできない。だからこそ、厄介なのだ。
「そうだな。少しでも盾になるか」
それとも、逆に煽る結果になってしまうのか。
どちらにしろ、もう二度と彼をキラに近づけさせたくない。声をかけられただけであれだけ恐怖を顕わにしたのだ。それ以上の接触をしようとされたらどうなるか。
「あいつが来る前にカナードさんには合流して貰いたいものだ」
それだけでも心強いのに、と言外に付け加える。
「大丈夫だろう。そのためにバルトフェルド隊長とロンド・ギナ・サハクが話し合っているんだろうし」
しかし、今回は大人しいな、あの人……と彼は続けた。
「てっきり、一番先頭に立ってあれこれとするかと思っていたのにな」
彼を止めるにはどうしたらいいのだろうか。本気でそれを悩んでいたのに、とディアッカは苦笑と共に告げる。
「それは、目の前に緊急事態があったからではないか?」
ここで下手に動いてはさらに事態が厄介になると判断してのことではないか、とイザークは言い返す。
「でなきゃ、ミナ様によっぽどきつく言われてきたか、だ」
どちらにしても爆発したときが怖い、とディアッカは口にする。
「大丈夫だろう。少なくとも、こちらに飛び火してきたとしても、キラだけは大丈夫なははだ」
それで十分だろう、とイザークは言い返した。
「まぁ、そうなんだけどな」
アスランが来るからな、と彼は呟く。
「それこそ、俺たちの関与すべき問題ではないだろうが」
自分たちがすべき事は、それにキラが巻き込まれないようにすることではないか。イザークのこの言葉に、彼は一瞬目を丸くする。
「そうだな」
だが、すぐにこういった。
「しかし、お前の口からそんなセリフが出るとは思わなかったな」
さらにこう付け加えられる。
「ディアッカ!」
これは流石に我慢できない。イザークは反射的に彼を怒鳴りつけていた。